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チェインドのすずのレビュー・感想・評価

チェインド(2012年製作の映画)
3.5
楽しげに映画館を出た母と子はタクシーに乗って家路についた。行き先をつげた母は、次第にこのタクシーの不穏な様子を察するも、閑散とした町外れの一軒家に連れ込まれてしまう。激しく抵抗する母はその男に暴力的に引きずり下ろされ…。そしてその日を境に、9歳の少年ティムは鎖に繋がれた 隷属の〝ラビット〟になった…。

クライム サスペンス•スリラー。よくありがちな監禁ものサスペンスの様相から、二転三転と物語が大きく動くなかで、次第に独自の世界観に惹き込まれていった。シリアルキラーに育てられた子供はどうなってしまうのだろう?という伏線でストーリーを追わせながら、余韻と含みを持たせるような、生活音だけが聞こえるエンドクレジットの演出まで、中々よく作り込まれていた。最後にその脳裏に浮かぶ映像には、何が見えてくるだろう?

トラウマに苛まれ、悪夢のフラッシュバックに見た異常殺人者ボブの人格破綻に繋がる記憶。被虐者は加虐者に というのは犯罪の真理であるのか…。そしてボブが夢見た父と子の幻影。朧げで 歪んだ父性愛(〝教育〟)を受けたラビット。極限状態下において、或いは心の支柱を完全に喪失してさえも、人間の理性は、どこまで尊厳を保っていられるのだろうか…。
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