爆裂BOX

チェインドの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

チェインド(2012年製作の映画)
3.8
9歳の少年ティムは、タクシー運転手のボブに母親を惨殺され、彼の自宅に監禁されてしまう。ラビットと名付けられた少年は足を鎖で繋がれ、脱走も抵抗もできぬまま連続殺人鬼のボブの下で育つが…というストーリー。
デヴィッド・リンチ監督の娘ジェニファー・リンチ監督による監禁スリラーです。
数年の歳月が過ぎ、鎖で繋がれたまま青年へと成長したラビットは、ボブとの間に奇妙な信頼関係の様なものを築き始めていた。しかし、いまだに殺人に難色を示す彼を殺人鬼として育て上げたいボブは、一人の少女を誘拐してきて殺人を強要するが、という内容です。
一種の監禁物ではありますが、監禁された者が味わう理不尽な恐怖やその状況からの脱出を描くのではなく、監禁された少年と監禁した殺人鬼が親子の様な奇妙な関係を築いていく、その心理劇に焦点を当てて描かれています。
ラビットと母親が映画を見た帰りに乗ったタクシーが全然知らない方向へと走っていって、母親が誰だけ叫んでも運転手のボブが一切答えない誘拐されるシュチエーションは実際にありそうでかなりリアリティ感じましたね。連れていかれた母親の悲鳴が響いてそれがやがて途絶える所も嫌な空気に満ちていました。
監禁が始まった当初は、怯えて逃げ出そうとしたりしていたラビットが、暴力や脱出を阻まれる中で従順になっていく所も、椅子に座ってTV見てるボブの足元に座って一緒にTV見て、青年になっても同じ事してる描写などで表していました。。
青年になったラビットを演じた役者もネガティブなオーラを放つ見た目で、ずーっと監禁されて青年になったらこうなるのかなと思わせられました。従順で逆らうことはないけど、殺人に関しては理解できないし拒絶する立場を崩さない所も良かったですね。ラビットの初めての犠牲者候補連れてきた時に、テーブルの下に隠れて医学書をバリアの様に周りに置いてる所は、子供の心のまま身体だけ青年になったんだな、と感じさせられました。
殺人鬼ボブも壮絶な少年期を過ごしてそれ故に殺人鬼になった事が過去の悪夢を見るシーンで描かれますが、それ故にラビットに過去の自分を重ねたのか医学書を与えて人体についての勉強させたり不器用ながら彼に父親のように接していって親子の様な奇妙な関係になっていく所も面白いですね。身勝手なやり方で接し方ではあるんだけど。ヴィンセント・ドノフリオがボブを演じてますが、こういうサイコな役がハマりますね。残忍な殺人鬼だけど見ていくうちに何か可愛げが感じられるのは、演出か彼の演技の賜物か。
悲鳴上げる女を家に連れ込むシーンは何度か出てきますが、具体的な殺人シーンはほぼないですね。酔っ払い女の喉切り裂くシーンくらいで、後は埋められる死体が映るくらいです。
ラビットに初めての殺人を経験させようと、少女アンバーを誘拐してきてからの後半の展開は、アンバー刺したけど殺してないのはすぐ予想付いたけど、裏切りに気付いて怒ったボブが行動起こしてからはラビットがそれ止めれるかどうか緊張感感じられてハラハラしました。
ラストの展開は予想を覆されましたね。確かに回想シーンで出てきたもう一人はどこ行ったんだろと気にはなってましたが。あっちの方も暴力的な性質持ちながらも、ボブよりは上手く隠して一般人として暮らしていけたんだな。殴る時も隠しやすい太腿のあたり殴ってましたし。
ラストも結局そこに戻るしかないのか…鎖は外れても繋がれたままという事か。エンドロールの音がまた、「彼」のその後を想像させて良いですね。
派手なシーンはなく全体的に静かに進んでいく映画ですが、役者陣の演技と独特のテイストのせいか飽きる事無く最後まで見れました。