尿道流れ者

マザーの尿道流れ者のレビュー・感想・評価

マザー(2014年製作の映画)
3.5
なんとなく白石晃ニ作品に真っ向勝負を挑めるのはかずおちゃんしかいないように感じた。

ここではない何処かや僕ではない誰かなどの、主体から離れたものへのある種の無知さやそう装うことからくる、飛び抜けた想像力の先にある歪さやスケールの大きさがかずおちゃんホラーの肝だと思う。また、反対に主体や客体を掘り下げるようなコンプレックスに焦点を当てたものもある。
そうした歪さやコンプレックスが登場人物の鬼気迫った表情によって切り抜かれて表されるところに怖さがあって、面白さや笑いもある。

この映画にもそんなかずおちゃんテイストが満載でありながらも、直球のホラー演出もあり、かずおちゃんの懐の深さを感じる。かずおちゃん漫画でたびたびモンスター化する女の人がまさにこの映画の怪奇そのもので、モンスター化するもののどこか美しさを目元や肌の質感に残す漫画での表現もそのままのように感じた。

歌いながらセンチメンタルな面持ちで街を練り歩く幽霊の姿なんて目新しく、かずおちゃんはいつまでも新しい視点を持ってるなと感激した。

きっちりした前半とドタバタな後半のアンバランスさ加減も往年のそれで嬉しい。

特典映像の監督姿が少し老人ホームで思い出作りに映画を撮る老人って感じでそこはかとないダークなイメージ映像になっているのもなんかグッときた。いつまでも元気でいてください。