通りすがりのアランスミシー

たまこラブストーリーの通りすがりのアランスミシーのレビュー・感想・評価

たまこラブストーリー(2014年製作の映画)
4.7
テレビアニメ『たまこまーけっと』の続編なのだがテレビシリーズ全く知らなくてもこれ単体で見ても成立するというのがまず素晴らしい。

内容はずっと好きだった女の子に男の子が告白して、最後になって思いが通じるというただそれだけのものなのだが、ささいなエピソードひとつささいな描写一つが極めて高い密度で描かれている。

山田尚子氏は監督デビューした「けいおん」から一貫して日常ものをやっている人だがこの人の空気感の表現は本当にすばらしい。
劇場版「けいおん」は飛行機の窓からロンドンが見えるというただそれだけの描写で、私が初めて海外旅行した時の気持ちを鮮やかにリフレインさせてくれた。
京都アニメーションの演出家は敏腕揃いだが、技巧派の武本氏や石原氏とは対極の感性の人。技術では語れない貴重な物を持っている人だと思う。

いつも思うのだが山田氏の演出は実写的で、いつかこの人に実写映画を撮ってもらいたいなと……と思うのだが、こういう人が実写をやる案外水と油だったりするのかもしれない。