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「エロ事師たち」より 人類学入門のILLminoruvskyのレビュー・感想・評価

4.0
原題『「エロ事師たち」より 人類学入門』(1966)

監督:今村昌平
脚本:今村昌平、沼田幸二
撮影:姫田真佐久
編集:丹治睦夫
音楽:黛敏郎
出演 : 小沢昭一、坂本スミ子、近藤正臣、佐川啓子、他

『野坂昭如の長編小説『エロ事師たち』を原作とした、エロ事師と呼ばれる男を通して当時の性風俗にスポットライトを当て、日本人の性をブラックかつシニカルな笑いを交えて描いた異色の人間喜劇映画。

原作未読。

今村プロダクション製作第1作目。

エロ事師の目を通して浮かび上がる日本社会の底の底でうごめく「性と生」を、グロテスクでありながら時に哀愁さえ漂う今村昌平らしい人間臭さが際立つタッチで描いた作品で、
流暢な大阪弁が心地よい、小沢昭一、坂本スミ子の演技がホント素晴らしく、個人的には気がふれて発狂してしまった坂本スミ子の演技のインパクトが凄かったです。

盟友 姫田真佐久の撮影も素晴らしく、水槽の鮒越しのショット、水中にいるかのような鮒越しの真俯瞰ショット、春が発狂するきっかけになった幸一の嫁が病院の廊下を歩いてくるシーンや春が鉄格子のまま海上に現れカメラがトラックバックするショットなどの実験的な視覚演出のショットは見事でした。

後半ラスト近く、一本一本陰毛部分の植毛に没頭するスブやんは、業を背負い仏像を木彫りする修行僧のようだった。
そして、小舟が大海原へと流されていくラストシーンもしっかり「映画」的なるモノを感じさせてくれました。
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