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「エロ事師たち」より 人類学入門のakrutmのレビュー・感想・評価

2.8
ポルノ製作や女性斡旋などを生業とするエロ事師の主人公のエロな私生活を描いた、今村昌平監督のドラマ映画。野坂昭如のデビュー小説『エロ事師たち』が原作であるが、主人公の妻や義理の子供たちとの関係をメインストーリーにするなど、大幅に改変されている。

その改変が私には全く合わなかった。小説と異なることがわかっているとは言え、エロ事師たちの描写はほとんどなく、主人公であるスブやんの人物造型のひとつとしてエロ事師があるという程度に矮小化されている。これだともはや「エロ事師たち」ではなく、小説とは別の作品としてオリジナルストーリーを考えたほうがよかったのではないかと思えてしまう。そもそも、豚のように太っているので酢豚から「スブやん」というあだ名になっているにも関わらず、小沢昭一じゃあ、その設定は全く無視されているし。小説の印象的な結末も変えられて、なんとも中途半端な最後になっている。

さらに、私生活のエロにフォーカスしたことで、全体的に内容が悪い意味で濃すぎるのも性に合わなかった。コテコテの関西人という設定もそこに拍車をかけていて、個人的には受け付けないレベルだった。お春を演じた坂本スミ子(『楢山節考』のイメージしかないので、びっくり)の演技は素晴らしいと思うけれど、スブやんを演じた小沢昭一の良さはわからなかった。確か小説には出てこなかった義理の息子(近藤正臣とは気づかなかった)の本作での存在意義がよくわからないし、重要な役である義理の娘・恵子役の女優が、色々な意味でひどいのも残念。
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