カトゥ

未来を花束にしてのカトゥのレビュー・感想・評価

未来を花束にして(2015年製作の映画)
4.8
気高さとはこういうものか、と圧倒された。

前評判の高さと、ポスターや邦題の大きな改変で有名になった作品(ポスターは僕もやり過ぎだと思う)。
原題の「Suffragettes」から判るとおり、イギリスの女性参政権獲得運動に関わったある女性達を描く。確かMary Poppinsにも彼女達の歌が出てきた。

その苛烈さ、今の目では戦闘的に過ぎる活動も、逆に言えば当時の女性達の立場がそうさせたのだろう。差別とは現状維持から生じる“常識”の圧力だ、とスティーブ・ジョブズも言っていた。
今の時代にこそ語られるのは、つまりはマイノリティへの姿勢が本質的に変わっていないから、なのだと僕は思っている。

社会階層も境遇もばらばらな数人の女性達が登場する。
どうにも勝ち目が無い戦い、先の見えない奮戦にしか見えない場面でも、ちょっとした物言いや立ち振る舞い、身につける小物がふわりと場面を明るくする。
憔悴し切った、それでも立ち続ける主人公の美しさは、それだけでこの映画を観る価値があったと思わせる。こういう、目の離せない凜々しさというのは、なかなか日常生活では出会えない。

命よりも大切なもの、なんて軽々しく言うものではないだろう。でも、命をかけた人がいたからこそ享受できる当たり前については、時々は考えていきたい。
この映画を観たら「政治に興味を持てないから選挙に行かない」なんて言葉に、恐ろしさすら感じるのではないか。


女性のみならず、今、勇気が欲しい全ての人にお勧めできる。「常識を疑う勇気が、未来を花束に変えるのかもしれない」とこれは一緒に観た友人の言葉だが、そういう映画でした。
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