過剰な表現とごっちゃまぜな世界観。ちょっとプロパガンダっぽいけど泣ける。エログロはないのに園子温映画だと一目で分かる。
鈴木良一はバンドマンの夢を諦めたサラリーマン。日本中が彼をみっともないと攻め立て、彼の居場所は狭い四畳半の家だけ。そんなダサダサの鈴木良一の心の救いは二つ。一目惚れした寺島裕子と一匹の亀だけであった。
原作が園子温の絵本なので、ファンタジーな世界観が全体的に漂ってる。ツッコミ不在な感じ。長谷川博己のメッチャキモい動きは流石と言ったところで、序盤はかなり笑わせてもらった。
このキモい動きの長谷川博己がとファンタジーな世界観が作り出すカオスな状況を観ているうちに、不思議と泣けてくる。何故泣いているのかよく分からなくなって考えてみると、純粋でまっすぐな心に胸を打たれたのだと分かった。園子温作品は詩的な台詞を演者に大声で言わせて、感情をガツンと観客に伝えることが多いので、今回は「純粋さ」をまっすぐ伝えたかったのだなと思える。時計じかけのオレンジっぽいベートーベンの第九に乗せて巨大な亀が行進する姿には流石に笑ってしまったけども。
当たりはずれのある園子温作品の中では、結構好き。でも、心に傷跡を残されるような感覚は得られなかった。