イスケ

猿の惑星:新世紀(ライジング)のイスケのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

オランウータンのモーリスの飄々としていて緊迫の場面にあっても安心を与えてくれる存在感が相変わらず良い。
さながらモーガン・フリーマンw

シーザーに感じる魅力も健在で、勇ましさの中にも優れたバランス感覚を持っているところに惹かれるんだよな。
このバランス感覚は彼の厚みとも言え、それは人間とエイプの両方の世界を見てきたことで身に付いたものです。


でも本作のMVPはやはりコバですよね。
シーザーとマルコムの友情は美しかったけど、最も感情を動かされたのはコバの存在でした。

彼には彼なりの理由がある。
さらには、人間側のドレイファス(ゲーリー・オールドマン)にもドレイファスなりの理由がある。

コバは実験と称して傷つけられ続けてきたため、人間に対する怒りがありましたが、
それ以上に彼を突き動かしていたのが恐怖だったであろうことは、クーデターまでの流れを見れば一目瞭然でした。
そしてそれはドレイファスも同様で、彼が見たのはエイプの恐ろしい一面だったのですから、人間社会を守ろうとする気持ちは難なく理解ができる。
そこに家族を亡くした原因が(元はと言えば人間のせいではあると理解しつつも)猿インフルにあるという引っかかりも作用することで、憎しみと恐怖が増幅し、彼を突き動かしてしまっただけのように思います。

マルコムとドレイファスに人間としての正しさや邪悪さの違いはそこまで無かったんじゃないかなぁ。
彼らがエイプと逆の出会い方をしていたら、マルコムがドレイファスに、ドレイファスがマルコムになっていたかもしれないよね。

それほどまでに繊細な心の動きが原因となり、戦いを生んでしまう。
それはやがて個々の友情ではもうどうにもできないほどに大きく膨らんでいく。

「共存できると思った」

本作で最も心を動かされた言葉。
シーザーは、人間界で育ててくれた家族にもマルコムたちにも深い愛情を持っていたんだけどね。
種族を守るためには、共存できると思っている者同士でも袂を分かつほかなくなってしまうことがあるんだ。

へその緒が地球に繋がっていれば良いのにと思わずにはいられない言葉であり、
いつまでも世界から戦争が無くならない理由が、ここには描かれていたと思います。
イスケ

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