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猿の惑星:新世紀(ライジング)のRのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

2014年のアメリカの作品。

監督は「ザ ・バットマン」のマット・リーヴス。

あらすじ

猿のシーザーが人類への反乱を起こしてから10年後、人類は猿インフルエンザによって、わずかばかりとなり、猿たちは森の奥深くに文明的なコロニーを築いていた。そんなある日、資源を求めた人間たちが猿たちのテリトリーを侵したことで一触即発の事態が発生、シーザーと人類側の穏健派グループを率いるマルコム(ジェイソン・クラーク「オッペンハイマー」)は和解の道を模索するが、猿たちと人類たちの対立と憎悪は日に日に増大していく。

最新作「キングダム」公開中ということで、鑑賞に向けて再履修。

ちなみに新シリーズの中では未だに本作が1番好きかな。

お話はあらすじの通り、前作から10年後ということで、人類は前作ラストでパンデミックが起こる布石のあった猿インフルによって、そのほとんどが死に絶えてしまい、一方、猿側の方は森の奥深くで独自のコロニーを形成し、暮らす世界となっていた。

で、主人公のシーザー、前作だとまだ若々しい感じが序盤の方はあったが、今作では完全に頼もしさマックスの完全主人公!!威厳とリーダーシップと少ない言葉だけで仲間を動かせる確かな統率力という、俺が喉から手が出るほど欲しい力を余すところなく駆使するリーダーと化している!もう眼光の鋭さからして、イーストウッドとかを彷彿とさせる「歴戦の戦士」感があって、もはや畏怖すら感じるくらい。モーションキャプチャーで演じたアンディ・サーキス(「刑事ジョン・ルーサー:フォールン・サン」)の確かな演技力もあり、完全に生きてそこに居る感じもする。

で、他に前作で出てきたオランウータンのモーリスやロケットなんかに加え、10年経ってシーザーも所帯を持ち、ブルーアイズという息子がいたり、奥さんとの間には生まれたばかりの第二子もいて出てきたりもする。

ただ、中でも前作で武闘派な一面を見せたコバのインパクト!!白濁した右目と下顎から突き出ている牙によって人相ならぬ猿相の悪さマックスなんだけど、前作だとまだシーザーに流れで従う感じだったのに対して今作では過去に命を救われたことでシーザーとの間に信頼関係は伺えるものの、意見のぶつかり合いによって胸に一物抱えてる感じが非常に不安感を煽る。

ただ、それでも仲間と共に狩りをしたりして平穏に暮らしてはいたんだけど、そんなある日、今作の人間側の主人公マルコム率いるグループが資源を求めて彼らのコロニーに侵食したことで事態は少しずつ変化していく。

序盤の方はシーザーの方は人間側に不信感を抱き、完全に人間NG!相容れない感じなんだけど、それでも猿たちのコロニーの側のダムを再起動させて電力を得たいマルコムは単身でコロニーに向かい、シーザーをなんとか説得、その後は色々と衝突がありながらも徐々にシーザーとの関係性を築いていく。

特に微笑ましかったのはマルコムにはアレキサンダー(コディ・スミット=マクフィー「エルヴィス」)という内気な子どもがいるんだけど、その子の持ってた漫画本が気になっていたモーリスに前日にコバから助けてもらったこともあって「助けてもらったお礼」とその漫画をあげて、内容がいまいちピンときてないモーリスにジェスチャーと言葉を交えて2人並んで一緒に読み耽るシーンは個人的にモーリスが一番のお気に入りということもあり、すげぇほっこりした。

で、その後無事電力も復興して、このまんま人間と猿側が何事もなく平穏な日々が少しずつ戻って来ればいいなぁと思いつつ、まぁそれじゃお話が持たないわけでそんな平穏を乱すのがやっぱりコバ!!

人間となんだかんだ仲良くするシーザーに嫌気がさして、反乱を企てるんだけど、このコバ改めて観ても意外とクレバーというか狡猾だよなぁ。人間側に偵察に行った初見は武器の試し撃ちをする人間2名に対して、いかにも猿です!という感じを出して、見せ物然とおどけといて、次来た時はその人間たちが「また来たんか!」と舐めプしたところをサラッと奪ったマシンガンで乱射撃ち!!更にマルコムグループのトラブルメーカーを独自に殺して、そいつの銃を奪った後は電力復興でお祝いムードになってるシーザーを見えない距離で暗殺未遂しといて「人間の仕業だ!」とヘイトムードを盛り上げる、いやぁ、邪悪だ、やはり猿だけあって知能指数がものすごい高いわと感心する笑。

更にコバムーブは続く。人間ヘイトが高まった仲間たちを引き連れ、更に銃を携えて馬にまたがり、こちらも電力復興で安心しきっている人間が多数いるコロニーに奇襲を仕掛ける!!てっきり悪役みたいな感じだと思っていた人間側のリーダー、ドレイファス(ゲイリー・オールドマン「オッペンハイマー」)が復興と共に電源がついたタブレットで家族との写真を見て涙ぐむシーンがまたグッとくるだけにその後の展開での絶望の表情が観ていて辛い。

加えて、このシーンがまた凄くて銃火器で応戦する人類にまるで「ナポレオン」が如く騎馬にまたがったコバたちが押し寄せ、まさに戦争状態!!そんな爆発がそこかしこで起こり、銃弾が飛び交う戦火の最中でコバはなんと両手にマシンガンを持ちながら乱射するという、人間が主役の戦争映画でも見ないような離れ技をやってのけたり、後方から攻撃してくる戦車を即座に奪い取って、扉から攻め入るというどこの国の将軍ですか?ってくらいの武神っぷりを見せてくるから凄い。あと見せ方も、この戦車を奪い取るシーンはコバにフォーカスを合わせた主観映像みたいになってて、流石「ザ・バットマン」の監督、映像も凝ってるなぁ。

ただ、やってることはシーザーの後釜というよりかは捕らえた人間たちを過去に自分がされたように檻に閉じ込めたり、人間を殺すように命じたロケットの息子のアッシュがそれを拒むとアッシュを引きずって、階下に落として殺してしまうなど、完全に暴君そのもの。

ここら辺はやってる規模は違えど、この前観た「ゴジラ×コング」のスカキンを彷彿とさせる。猿相の悪さも似てるしな笑。

で、そんなコブの策略によって重傷を負ったシーザー、瀕死の状態のところをマルコムに助け出され、向かった先はかつての我が家。

そこでは、かつての主人ウィル(ジェームズ・フランコ「氷の国のスイフティ 北極危機一髪」)との写真が飾ってあったりはするんだけど、もう家も草ボーボーで埃だらけのところを見ると、やっぱウィルも死んじゃったのかなー。

その家でなんとか元気になったシーザーが、その夜ウィルとの在りし日のビデオ映像を見るシーンがあるんだけど、それまでずっと顰めっ面で威厳を保ち続けていたシーザーがわずかに表情を緩めながら、その映像を一匹観続けるシーンはめちゃくちゃグッときた。

で、回復したシーザーは遂にコバが占領した摩天楼へ向かい、遂に対峙するんだけど、ワイヤーが張り巡らされた頂上付近でまさに獣そのものな野生味溢れる殴り合いの末、窮地に陥るんだけど、ドレイファスが摩天楼の支柱に仕掛けた爆弾を起爆しての必死の自爆の影響で摩天楼が崩れ去り、形成逆転、瓦礫から落ちそうになるコブに一旦はかつての関係のように手を差し伸べ、コブも(本心ではどう思ってるかわからないけど)「エイプはエイプを殺さない」と醜くも命乞いするんだけど、そこでシーザーは思い直して「(コバは)もうエイプ(仲間)じゃない。」と冷酷にもその手を離してしまう。

前作での仲間としての共闘、今作の序盤、狩りのシーンでクマに襲われるピンチに勇敢にシーザーを助ける姿、そしてわだかまりはあれど、何度も主君とその部下としての関係性が丁寧に丁寧に描かれたからこそ、一線を踏み越えてしまったコブの行動を許さないシーザーの気持ちもわかって切ないし、その上でシーザーに突き落とされてコバが絶望の表情を滲ませながらものすごい断末魔を上げて落下死していく最期のシーンが脳裏に焼き付く。

コブも人間に大切にされていたら、歩む道も違ったのかなぁ…と思うと、個人的にはこれはコブの物語だったのかもしれんなぁとも感じてしまう。

ラストは、ドレイファスが呼び寄せた人間たちの軍団が接近する中、ウィルと同じように、マルコムとの間に芽生えた絆と別れを告げたシーザー、前作と同じようにシーザーの真正面からのアップ、からの決意の眼差しで今作は終わるけど、人間たちとの戦いの果てに遂に「同族殺し」という原罪まで背負ってしまったシーザー、なにを思い、その先にはなにが待ち受けるのか、徹頭徹尾、これはやっぱ人間ではなくエイプの物語なんだというラストも実にセンセーショナル!

というわけでやはり何度も見返してもめちゃくちゃよくできた英雄譚で何より燃える。次は3作目を観てから「キングダム」まで…行けるかなぁ笑。
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