垂直落下式サミング

ジュピターの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ジュピター(2014年製作の映画)
4.0
ミラ・クニス。チャニング・テイタム。種族や惑星を越えたラブストーリーに胸キュン。遺伝子の二重螺旋の偶発性が、宇宙の命運をめぐる陰謀へとつながり、運命を変えていく。あなたは未確認生命体。ぶっとい身体と、わんちゃんの耳。さあ、女王陛下、あなたの宇宙へまいりましょう。
家業の掃除婦をやっている貧しいヒスパニック系の女性が、実は宇宙帝国の皇位継承者だったのだ!ベタなシンデレラストーリーながらドキドキしてしまいます。
海をわたる最中、大西洋のどこかで生まれた彼女に国はなく異邦人(エイリアン)だけれど、空に輝く星だけは自分を証明してくれる。一気に主人公の人となりをモノローグで解説。最近の映画ならもっと凝りそうなのに、思い切りのいい時短術。
アクションでみるべきはシカゴの空中戦。狼人間とのハーフなチャニング・テイタムに抱えられた女の子が、シカゴのウィリスタワーから落下。シカゴトリビューン、ミシガンアベニューブリッジ、高架鉄道、シカゴ市庁舎、映えなロケーションでとてもいい空中戦。オタク好きする絵面だ。お姫様抱っこの上昇から、飛んで跳ねて街中ぶっ壊しを経て、おんぶで着陸。いいわね。病みつきになりそう。
隠匿された搾取構造に気づいてしまうという「マトリックス屋」ウォシャウスキーの御家芸が本作でもみられるけれど、これはバランスが悪かったと思う。主人公がお金ほしさに卵子を提供しに不妊治療センターに行ったらエイリアンに襲われるのだけれど、なんだか唐突すぎてよくない。
ベタなグレイ型宇宙人はそこらじゅうにいて人間の記憶を操作するのだと、あとになってあのときの不自然な描写に説明ゼリフでの答え合わせとなる説明はあるのだけれど、じゃあだったらもっと乱暴に抹殺に動いても不思議じゃないと思うのだが…。
町を破壊されたのを隠蔽できるってんだから、人間ひとり殺すくらいなんてコトないでしょ。やっぱ世界観はバランスなんだと思う。この世界がマトリックスくらい逃げ場がないのなら納得できるんだけど、小型エイリアンたちがせっせと頑張ってビルとか直してる絵面は、マヌケに思えてしまった。
あら探しばかりになってしまいそうなので、いいところも。本作の独自性は、宇宙の王族の御家騒動という物語の性質上、戦争や戦いだけじゃなくて、宇宙連邦の事務手続きみたいなのも見せてくれるところ。汚水まみれの巨大宇宙役所で、アンドロイド弁護士と一緒に、うちは管轄じゃありませんからとか、うちにくる前にこっちを済ませなだとか、部署をたらい回しに。王位継承も一苦労だわね。
もっとスペース事務手続きみたかったな。地球の所有権とは?宇宙でもっとも価値のあるもの?地球の収穫はいつになるの?そういった契約と権利をめぐる政治の世界を見せてくれるのかとおもったら、王位継承権をめぐる戦いに発展していく後半にかけては、頭悪くてしょーもない。
ミラ・クニスが敵の本拠地に拐われるのを、おんなじはなしのなかで三回も繰り返すのはどうなの?最後にいたっては、女王ひとりを敵の船に乗せるとか、まわりもさすがにバカすぎんか?家族を人質に握られているとはいえ、なんか対策するべきでしょ。
あーあ、結局あら探しになってしまった…。ストーリーの運びかたは、あんまりほめられたもんじゃないと思うけれど、本作の一番の売りはなんと言っても荘厳なヴィジュアルイメージだ。宇宙船や別の惑星の描き込みには目を見張るものがあり、色彩や色合いにも格式高い厳かさをはなっている。
特にドラゴン人間のCGのクオリティは凄まじく写実的。格闘をしても羽ばたいても、ぜんぜん粗が目立たないどころか、普通の歩行の重心移動にさえ不自然な動きがなくて、解像度の高い自然さで実写の人間と画面に共存できていた。
宇宙みはなかったけど、トカゲトカゲしていてかっこよかったですね。凶戦士ブレイズクローや襲撃者エグゼドライブみたいで。赤単速攻なつかしい。可能なら毎ターン攻撃して、トドメをさすスピードアタッカー。音すらぶっちぎり。