饂飩粉

ソロモンの偽証 前篇・事件の饂飩粉のレビュー・感想・評価

1.0
 後編への壮大な予告編にしかなっていない。
 校内裁判を行うまでの下準備ばかりが延々と続き、結局肝心の面白いであろう場面や展開は全部後編に持越しなのだろう。そりゃあ誰だって「後編が観たくなる」わけだ。前編だけではまるで面白くないのだから。
 カメラワークや子役の演技がいくら良くても、話が遅々として進まない。
 前編は要するに、主人公が「校内裁判を行おうと決意し、準備をする」までの物語なのだが、それと同時進行で他の生徒や事件についてのアレコレもあって、それらが中々結びつかないので正直退屈。
 そして前編を観た限りでは、観客としても「自殺としか思えない」というのはいかがなものか。確かに「ミステリーなんだからそんな簡単な話ではない」のだろう。しかし観客を惹きつける謎らしい謎が見受けられないので、主人公が真実に拘る理由が単に心理的な動機のみになってしまっている。そしてこれはもう別の登場人物とモロ被りしている。
 何か観客や主人公にのみわかる形で「本当に自殺なのか?」と思わせる不審点や証拠の描写が欲しかった。これがないばかりに、ミステリーとしての面白みに欠ける。そのような描写があってこそ、主人公ら中学生と「都合の悪いことや面倒なことを隠蔽もしくは有耶無耶にしたままにしようとする大人」との対立関係がより強調されたと思う。

 だが個人的には「肝心なところは全て後編で」という形になってしまった映画そのものに納得いかない。たとえ前編であっても「前半のクライマックス」のようなパートは欲しいわけで、本作ではそれがないばかりに「一本の映画を二つに分けたうちの最初の方」みたいな風になった。
 こんなんで一本の映画と言い張るのなら、容赦なく一点にせざるを得ない(一以下にすると表示されなくなってしまうので)。
 きっと後編では前編のダイジェスト版もあるだろうし、はっきり言って「観て損した」としか思えない出来だ。前後編に分けるって、単に「時間で二つ区切る」ってことじゃないから。
饂飩粉

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