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アッテンバーグのleylaのレビュー・感想・評価

アッテンバーグ(2010年製作の映画)
3.9
今作はランティモスが製作、出演していて主人公のアリアン・ラベドとパートナーとなるきっかけにもなった作品とのこと。

女性同士のディープキスから始まり2人の奇妙な行動に身構えたけど、中身は性と死、娘が父から独り立ちする姿を描いていて、こびりつくような死と孤独を感じる作品。ストレートなテーマを、奇妙でユーモラスな演出のオブラートで包んでいます。

父と娘の関係性の描き方が友だちみたいでとても良い。それがアセクシャルの要因かもしれないけど…。言葉遊びや動物のマネをしたり、あけすけに下半身のことを話しながら、淡々としつつも互いの愛情が伝わる。だから父の死が近づくラストに向けて切なくなっていく。お涙頂戴でないのもいい。

主人公はアセクシャルで性欲がなく悩んでいる。知り合った男(ランティモス)とセックスをし、どうやったら相手が満足するのかを探ってゆく。まるで人間として正しく生きたいと、必死にもがいているように見えた。それは父のために、父がいなくなった自分のために、なのかもしれない。

動物学者アッテンボローの動物ドキュメンタリーを観る彼女に付き合う父の優しさが温かい。動物の性行為は必然的な行動だから、彼女は動物から学ぼうとする。繰り返し映される友人との奇妙なステップや奇行もその一環なのかな。謎だけど楽しい。

ちなみにタイトルの『アッテンバーグ』とは、アッテンボローの言い間違い。このセンスが好きだな。

少しだけ男性と心を通わせるようになり、友だちと別々に立ち去るラストシーンは、主人公の精神的な独り立ちにも思えた。

どんよりとした空と閉塞感がアンゲロプロス監督作品を彷彿させ、ギリシャという国の社会的・経済的な背景を思い起こさせる。

説明がなく独特な作風なので好みは分かれると思うけど、私は好きな作品でした。
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