以下の雑文は、私自身の恐怖体験について綴ったものであり、本作品との直接的なつながりはございません。
お時間のあるときにおつきあいいただければ幸いです…
( 結末につきましては、いちばん最初のコメント欄をご覧ください。 )
深淵を覗き込んではいけない。
そのとき深淵もまた、あなたを覗き込むのだから。
-- ニーチェ --
" …… あかん、やってもうた。"
ある夜、乗客がほとんどいない深夜の電車のなかで目覚めると、私が降りるべき駅はすでに数キロメートル後方へと過ぎ去ってしまっておりました。
" やばい。引き返せる電車はもうないはずやな… "
ところが次の駅で下車して確かめたところ、20分後に反対方向の電車がやってくるようです。
"ラッキー、こんな時間にまだ電車あるんや 。
… いや、でもちょっと待てよ。これは日ごろの運動不足を挽回するチャンスかもな。真夜中のウォーキング、やってみよか。"
素直に電車を待てばよいものを。
いま思えば、このとき私は既に"この世の者ならざる存在"に惹きつけられていたのですね…
午前零時を過ぎると、人の姿などまったく見あたらなくなる田舎のベッドタウン。
国道沿いの薄暗い道を数十分北へ歩けば、無事にわが家へとたどり着くことができるはずでした。
" ん? あれはいったい …? "
ひんやりとした空気のなか、静かすぎる道のりをゆっくりと歩きだした私の眼前に、やがて古びた大きなゲートが現れます。
" K〇〇〇〇E ○○工場 / 研究所 …
この場所にこんなのあったっけ?"
抽象化されたアルカイックな笑みが、ぼおっと浮かび上がる寒色系の看板。
照明が落とされているので細かな部分までは見えないものの、意外に広い敷地の奥には、コンクリート製と思しき建造物がうずくまっています。
今までここで見かけた記憶がないにもかかわらず、なぜか経年劣化を感じさせるその佇まい。
そして敷地の奥からこちらに向かって漂ってくる、凄まじい"瘴気"。
" まずい… ここは良くない。 "
赤羽の老朽化した木造アパートの一室で、
甲州街道に程近い桜上水の友人宅で、
豪州·某所の博物館の仄暗い一角で…
この世のどこにいても"忌むべきモノ"たちの存在を察知してきた私の"異能"が「ただちにここから離れよ!」と告げています。
でも私は、その場から立ち去ることができません。
"結界の向こう側"に引き込まれつつある私の肉体が、主(あるじ)の命令に従おうとしないのです。
恐ろしくてしかたないのに。
決して触れてはならない"禁忌"に近づきつつあるとわかっているのに。
"タスケテ… 誰カ…タスケテ…"
いつの間にか、そんな呟きが自分の口から漏れていました。
"タスケテ… 誰か… あっ、人がいる。助かった!"
ゲートのすぐ近くにある警備員の詰所の一角にだけスポットライトが当たっており、その光のなかに額の広い男性が座っています。
"地獄に仏"とは、まさにこのような状況を言うのでしょう。
ようやく呪縛から解放された私は、やや不自然に身体をのけぞらせたその男の方へと足早に近づいていきます。
"あのぉすみません、この工場はいつからここに? あのぉ…
そう話しかけた刹那、私はその男がもはや私の問いに応えられる状態ではないことに気づいて心中で悲鳴を上げました。
" えっ !!? そんな … まさか … "
"ここではない何処か"を見上げたまま凍りついてしまったその男の笑みは、皮肉にも先ほどの看板に描かれていたものと酷似しています。
でも彼の瞳は、何も映してはいません。
そこで私が見てしまっ