井出

ジャージー・ボーイズの井出のネタバレレビュー・内容・結末

ジャージー・ボーイズ(2014年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

どうしてフォーシーズンズではなく、ジャージーボーイズなのか。それは、ツアーで各地を回りながらも、常に故郷であるニュージャージーでの絆を意識して生きているからだろう。故郷との付き合い方が彼らの人生を物語っており、そして彼らのラブソングは、もしかしたらニュージャージーに贈られているとも言えるのではないかとも、思える。故郷との絆は時には良いものとして、時には悪いものとして表れる。
それは彼らの光と影を強調する。彼らは世に知られるように活躍し、スポットライトを浴び続けていた。しかしやはりその裏には、犯罪、借金、マフィア、酒、ドラッグ、不仲、不倫、ギャンブルなどの影があった。今回、その影を描こうとした思いは、人を撮る際に影をうまく利用していることにも表れていると思う。陰影はよかった。あと、車移動のシーンがレトロな撮り方で、時代に合ってたかな。
また今回は、自身の作品に対する評価が見えたように感じた。みんなで盛り上がっているところから離れて、1人暗い部屋でテレビを見ていた童貞のボブが見ていたのは、イーストウッド出演の映画だった。今回はきっと、自分の得意でないものを描こうという思いがあったんだろうと思う。その一方でビリーワイルダーの作品をみんなで仲良く見ているシーンがある。ビリーワイルダーへの敬意というか、その俗っぽさとの対比がなされていたように思う。どう捉えているかは知らないが、両者は違うんだわ。
当時の社会も読み取れる。その頃は、社会、階層の流動化が活発になる前後のこと。故郷や社会的階層から出ることが可能になりつつあった。しかしそのためには、特にイタリア系は、マフィアに頼らざるを得なかったということ。ミュージックシーンでは黒人が重宝された時代でもあった。プロデューサーはゲイで、同性愛にも寛容になりつつあった。とにかく当時は、社会の変容が目まぐるしかったということがよく分かる。そこにアメリカンドリームという側面があったのだ。お年寄りに映画を撮ってもらうと、こんなことが分かるメリットを改めて感じた。
フランキーと娘の道の違いからも考えさせられる。娘は両親に放置され、ドラッグで死ぬ。このことからも分かるが、フランキーがここまで活躍できたのは、両親による「門限11時」があったからに他ならない。親の愛情がいかに重要であるかも考えさせられる映画だった。コミュニティが崩壊し、愛に飢えたらドラッグにつけこまれる、そんな社会に、娘は殺されたのかもしれないが。
クリストファーウォーケンの演技がすごかった。トミー役もよかったかな。来年は日本でもミュージカルがあるらしくて気になる。映画と比較したら面白いだろうな。
井出

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