せいか

ゴーン・ガールのせいかのネタバレレビュー・内容・結末

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

自分用メモ

8.31視聴。dvdレンタル。原作未読。

初手で女優が役柄のヤバさを滲み出してたのもあってどういう話かは察したのですが、そこをひたすらヘドロ色に塗りたくっていく気持ち悪い作品だった。
なおかつ、主人公二人に限らず、相手に対して支配権を取りたいさまざまな男女が群れて一つの気持ち悪い虫として蠢いてもいるような作品でもあった。
重ねるが、とにかく気持ち悪い作品だった……!!!

夫も妻も何かに寄生して冷め切っていて、特に妻のほうは自分の理想に相手を従わせようとする。
夫はややマッチョ思想で普段はなりを潜ませていても女性を見下している態度が所々に滲み出る。
妻は自分の幼少期が親によって踏みにじられたところに歪みの端があるのか(自分がモデルになっている児童書で、その主人公は事実とは違ってはるかに自分よりも完璧な人生を歩んでいた)、有名作品のモデルの少女として知名度もあり、家も豊かで才色兼備という人並みはずれた能力がありながらも歪みに歪んでいる。昔から男と付き合えばその別れ際にはレイブなどを巧みにでっちあげて事実を書き換えて相手の人生を徹底的にメチャクチャにして、自分は優位なところで被害者を演じる。とにかく、作品の最後に至るまで、思考もだいぶサイコパスである。この妻、いかんせん頭はすごく切れるので、弁護士を雇うまでは下手をこきまくっていた夫とは異なり、おおよそ完璧な立ち回りをほうっておいてもするのだが(特に安全圏から「被害者ぶる」ことに関しては神懸かりに巧みで吐き気を催す)、それゆえの高慢さもひどく、特に同じ女性に対する蔑み方はバカ女という形容からも窺い知られるように露骨である。インテリで財力もあって自分のことを好いてくれている男よりも(こっちはこっちで彼女に対して支配的な態度だったのもお眼鏡に適わなかったのだろうが、それに併せて知力財力が優れていたのも彼女のプライドから見て駄目なところだったのだろう。学力があるのだから自分で自立して働く選択もできただろうけど、キャリアの道には興味がないのか、働くことを忌避しているのか、その社会には受け入れられなかったのか)、自分の理想を演じてくれるハンサムなバカ男のほうにふらりとする浅はかで身勝手な態度もとことん気味が悪い。ほんときもちわるい!

妻も夫も世情という大きな塊(特にここでは愚昧な大衆たちとして描かれている)を相手に、内心では見下している彼らないし彼女らからの人気を得ることに躍起になり続けている作品であるという面もあるし、大衆たちもいかにも小バエかゴキブリであるかのごとき態度でそれに応えもする。

薄っぺらなフェミニズムや女性進出、平等観念をひたすら皮肉り、人々の俗悪さを露呈し煽りまくる面白い作品だった。
アメリカ人はとくに妊婦が好き(だから可哀想な妊婦=女に安い同情をすぐにする)、股を開くのは誰だってできるのに……みたいなセリフのところは特に痺れた。
ほんとにひたすら気持ち悪い作品なのだけれど、露悪に露悪を重ね、ペシミスト的には嘔吐感がありながらもどこかスッキリしてしまう恐ろしい作品でもあった。
描かれた範囲で言えば、物語ラストは結局、可哀想な女を徹底的に演じた妻に軍配が上がり、駄目な夫は嫌悪しながらもその寄生をやめられないといったものでもあった。とことん「女」に関する女の歪みと社会の歪みを描いていたとも言えるのだろう。
せいか

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