Ricola

ゴーン・ガールのRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

息着く間もないサイコサスペンス。
約2時間半という長尺にもかかわらず、あっという間に時間が過ぎたように感じた。
この作品が紹介される際に、エイミーという人物がたびたび「悪女」だと言及されているのを目にしていたが、悪女というよりも悲しきモンスター化した人間のように感じた。愛と執着心を混同した彼女を誰も止めることはできないのだから。


結婚5年目を迎えたにも関わらず、主人公のニックは妻エイミーのことをほとんど知らない。
美しく、ハーバード大出身の賢い彼女は周囲から羨まれる妻であるはずだ。
結婚記念日には毎年宝探しを仕掛けてくる彼女。初めて出会ったときにクイズ形式の自己紹介をしてきた彼女。
彼女の親が彼女をモデルに書いた児童書シリーズは大ヒット。
しかし、「完璧」な娘で妻でもあるエイミーの抱える闇はあまりにも大きかった。

エイミー失踪事件を世間は大々的に取り上げる。エイミーとニックの夫婦仲までもがメディアに印象操作され、大衆はそれに惑わされる。失踪した完璧な妻とその完璧さに嫉妬した夫という構図は、恰好のゴシップネタなのだ。
また、「ここ」にいないエイミーが残したことが、確固たる証拠だと皆信じてしまう。ニックがいくら反論しても、口を閉じたままのエイミーのほうが説得力があるのだ。なぜならメディアや大衆が、ニックが犯人だと疑ってかかっているから。

ニックとエイミーはそれぞれ「別人」を装うことで、関係をなんとか維持してきた。
さらに、この事件の起こっている最中でも彼らは装い続ける。
エイミーは失踪中には別人を装おざるをえない。また、自らの目的を達成するために昔の高校時代の恋人に再会し、彼の望む「人物」を演じる。一方のニックは大衆の前で「いい人」を演じ、大衆からの支持を得るために思ってもないことを言う。彼は妻との戦いに勝利するために、である。

妻の虚栄心と執着心。それを見抜けず苦しみ続ける夫。救いようのないラストに、背筋が凍る思いをした。
Ricola

Ricola