生永這人

ゴーン・ガールの生永這人のネタバレレビュー・内容・結末

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

(まず、良作でしたと断りを入れて)
「女の復讐」をミステリ・サスペンスらしからぬ大胆さを以て描き、また、フィンチャー監督らしい終始漂わす冷たい雰囲気(主演女優のロザムンド・パイクの演技にゾッとしてしまう
!)は、嫌なほどクセになります。


失踪した妻が登場する中盤、おそらく観客の大半は「ああ」と抵抗なく受け入れてしまっただろうと思います。
並みの映画ではそこでTHE ENDとなりましょうが、鬼才の作品にかけた期待は想像以上に大きい。だからこそ、真の結末はどうなるのか、そればかりに取り憑かれてもおかしくはないのでは。というのも、「セブン」の監督と知っている観客がハッピーな展開を望むわけはないし、むしろ同作を超越する「カタルシス」的展開を切望しているに違いないからです。

振り返ってみると、「それ」は無かったのではないかと。緻密に積み上げてきた言動が一気に崩壊して、二度と元には戻らない状況で暗転するような作品・・・これを期待してしまえば、少々落胆してしまうかもしれません。
しかし、本作の「怖さ」、実は二度と元には戻らない状況が此れからも続くことにあると捉えるならば、これはもう冗談では済まない!
怖さの正体は「もどかしさ」でしょうか。
観客は知っています。妻がしたことを。サイコパスである彼女と秘密を共有してしまいました。
その秘密は決して複雑なものではなく、むしろ暴露したい欲求に駆られるほど、割とシンプル。にもかかわらず、仮に暴露しても状況は回復しないとも、観客は知っています。
すべて知っているのに「完全犯罪」は成立してしまい、しかも、非常に不快な方法で完遂されてしまう・・・嫌ですね。
そして傍から見れば「ハッピーエンド」・・・かなり嫌ですねえ。

(ただ、種明かしされても「おお!」とはならず「げえ」と。確かに頭脳的ではあるけれども、クールではないな、と。
かといって、常軌を逸しているかと問えば、突き抜けていない印象は拭えません。ミスや成り行きも多く「完璧犯罪」ではない・・・加えて予想がついてしまった。
もっとも、犯罪にクールだとかアメイジングだとか判断する自体が烏滸がましいのでしょうけれども。
※なお、他者様のレビューを拝見して、「完璧」さを演じる必要要素として「婚姻関係」がある、と捉え直したところ、なるほどなと、自分の観点の狭さを痛感いたしました)


さて、”Gone Girl”というタイトルが示唆するのは、「失踪した」妻ではなく飽くまでも、「完璧なエイミー」なんでしょうね。
彼女の自我なんて、とうの昔に消えて亡くなってしまったのよ。
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