幽斎

ゴーン・ガールの幽斎のレビュー・感想・評価

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
5.0
予告編が素晴らしい。Elvis Costelloの「She」の歌詞の部分が本編では削られてるが、ソレが物語のキーワードと気付いた時は鳥肌が立った。脚本も兼ねる原作者Gillian Flynnは自らをフェミニストと公言するが(美人です)、現代のミステリー界を代表する作家とDavid Fincher監督が生み出した、極上のスリラー。

Rosamund Pikeがスリラーでは珍しくオスカー候補と成り、賞賛されるのは当然ですが、この作品はBen Affleck無しには語れません。ラジー賞にノミニーされましたが、大きなお世話(笑)。彼は苦労したインテリですが、オンリーワンな存在感はもっと評価して良いと思う。彼の困り顔も良い味出してるし、物語の起点と成る「顎に手を当てるシーン」では、彼本来のインテリらしさも垣間見え、全力で擁護したい。

原作にはインスパイアされた事件が有る、「レーシィ・ピーターソン殺人事件」、誰もが羨む夫婦の妻が殺された。夫が有罪と成り服役していますが、証拠に乏しく全米で大議論を巻き起こした。世論の空気に判決が左右され、夫は今も無実を訴え続けてる。

ミステリーとして考えると穴も多く(原作も其処が主眼では無い)、監督の罠に嵌って犯人探しをやると思う壺。本作の趣旨1点目は、マスメディアを使った「劇場型犯罪への警鐘」。2014年は今ほどソーシャル・メディアが一般化しておらず、作品も古い捜査方法に写る。Tyler Perryの弁護士も儲け役だが、ゴシップを金に替え人の不幸を楽しむ大衆心理は今の方がずっと怖い。最近だと「純烈」の人も昔だったら辞めなくても、と思います。

2点目は「人はなぜ結婚するのか?」。おそらく世の奥様方は旦那に対して「こんな筈では無かった」と全員が思ってるのでは?。恋愛と結婚の大きな違いは「対面」だと思います。近所付き合い、職場、義理の親とあらゆる角度から見られてる。結婚式で誓うのは愛ではなく、夫婦と言う役割を、この先一生演じると言う契約なのです。Ben Affleckは、何処で間違えたのか?、それは皮肉にも始めからだと思います。女性の理想を演じ続けて結婚したが、安心して妻を女と見ず、独身時代の努力を怠る。妻からすれば、彼女の行動は肯定しないが、気持ちは「分らんでも無い」と思われるのでは?。

本作はミステリーを観た気に為ってるが、深層心理に現実を叩き付ける、別な意味のミステリーが隠されてる点が秀逸。刺激的な映像が続きますが、是非最後までご覧下さい。そして、観た後で無言になる(笑)。「GONE GIRL」は妻の失踪を意味してる様に見えて、「女って結婚すると、女の部分がどっか行っちゃうんだよな」と言う男の本音が隠されてる。

今まで観たスリラーで最も怖い作品、私は独身ですが映画が嘘だと信じたい(笑)。
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