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ゴーン・ガールのhilockのレビュー・感想・評価

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
4.0
社会の非適合者と、その取り巻きにいる人々を丹念に描いてきた監督フィンチャーの最新作。
妻の失踪から始まり、誘拐か?、殺人か?翻弄される夫を観客に見せつけながら話は進行していく。このような個人の苦悩は、『ゾディアック』でも描いていたのだが、今回の作品はひと味違う。まず、配役の秀逸さが光る。メディアに振り回される夫役に、初期は誠実さで売り始め、ここ最近の悪役が目につくベン・アフレックが好演。夫が善悪どっちつかずの印象を観客に持たせられたのは、アフレックだからこそともいえる。逆に妻役のロザムド・パイクは、この真逆の役を演じてきたわけで、二人のなんとも言えない関係が全体のおどろおどろしさと繋がり見終わっても不快感は抜けきらない。
夫の裏切りを目の前で見せられ(もちろん不倫という避けられない事実は決定的だが、正確には夫から受けた自分だけの愛情表現を他の女にも同じように使用していたという、妻=夫のNO.1女性という立場からの凋落と、それに伴う嫉妬。もう一つはその愛情のシチュエーションが自分にされた時以上にリアルであった点であろう。)、復讐心へと駆り立てられる気持ちは、女性でなくとも大いにあり得る。
しかし、怒りに後押しされ緻密で周到な行動をとる姿、特に中盤のカレンダーにおとした計画には寒気すら感じるし、歯車が狂い始め、そこから脱却しようと、過去の男に憐れみを乞う様変わり、妻への敬愛を語る夫の姿をTVで見て心変わりをする姿は、常軌を逸している。
私が特に鑑賞していて気になったのはこれらのエイミーの行動で、昨日の怒りが何もなかったかのように行動している姿にである。利点のみ、追い求めるという点で考えれば、最近流行りのサイコパシーとしか捉えられない。そう考えれば現代の精神的な問題を捉えた映画は一段階すすんだことを意味している。エイミーの過去の男の生活も至ってサイコ的であり、不気味・悪趣味であるのだが、妻のこの行動がすべてをかき消してしまっている。また、長い作品をコンパクトにできたのは、原作者の秀逸な脚色があってこそでもある。逆に考えれば、要らない箇所のそぎおとしを作者が行う行為は、自己作品の否定にも繋がる。それを買って出た原作者は称賛に値する。男の復讐という点で第二ラウンドの火蓋がきられるのは、自由の国アメリカではあり得ないわけではない。
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