あおや

インヒアレント・ヴァイスのあおやのレビュー・感想・評価

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)
4.3
いつもPTA作品を観た後は「夢をみているようだった」という感覚に陥る。それはいわゆる「夢みたい」と表現するときのソレではなく、夜眠っているときにみる夢そのもののようなのである。本作は特にその色が濃かった。

なんとなくの目標はありつつもそれが全てという訳でもなく、色々な要素が次々に投げ込まれながらもつれるようにして進んでいく。夢をみている間は「なんだこれ」と思うこともなく「ま、こういうもんだよな」と妙に落ち着いてみてしまう。そして映画が終わるとまるで夢から目覚めたときのようにゆるやかな身体のだるさを感じながら、つぎはぎされたシーンがモンタージュのようにフラッシュバックする。まさにこれは、目を開きながらにしてみる夢なのだ。
同時に、この境界線を曖昧にすることは当時のヒッピーの生き様に通ずるものがあるのではないだろうか。マリファナによって夢と現実の壁を壊すことで、現実に対しても「よく分からないけど、まぁこんなもんだろ」と思ってしまうような。また、陽気なイメージのあるヒッピーもPTAの手にかかればジットリとした重みをもって描かれる。終盤のシャスタとのシーンは、陽気とは程遠い途方もない孤独が車内に充満している。

宣伝ポスターをはじめとした作品の小洒落た雰囲気もさることながら、劇中で使われる音楽も素晴らしい。
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