MikiMickle

リトルプリンス 星の王子さまと私のMikiMickleのレビュー・感想・評価

4.0
全てを計画的に将来まで管理する母のもと、進学校に入るために猛勉強をしている少女。
進学までの夏休みの間も勉強尽くしのはずだった。
しかし、引っ越してきた先の隣に住んでいたのは、庭で飛行機を飛ばそうとするおかしな老人。
きちんと区切られ、我関せずの町の中で煙たがれる老人。
ある日、窓から飛んできた紙飛行機。それは、元飛行士の老人が書いた物語「星の王子さま」の1ページだった。続きが気になる少女は、隣を訪ねる事に。母に内緒で、お話を聞いたり遊んだり、一緒の時をすごし、二人はかけがえのない友達になっていく。
しかし、物語のラストをきいてショックを受けた少女は、老人と距離をおいてしまう…
が、夏休みの最終日、老人が病にたおれてしまい、少女は老人の“星の王子さまにもう一度会う”という夢を叶えるために、キツネのぬいぐるみと共に飛行機に乗り込むのだ。

サン=テグジュペリの「星の王子さま」のその後を描いた作品。
というか、星の王子さまのストーリーを平行しつつも、少女の成長を描いたもの。


まず一言で言えば、見たあとで、心が洗われたようでした。
「問題なのは大人になる事ではなく、忘れてしまう事だ」とあるように、私たちはずっと育んできたなにかをどんどん忘れてしまっている。
それは、新しい事を体験する喜びかもしれないし、めいいっぱい遊ぶ事かもしれないし、悲しい事、楽しかった事…人はどんどん忘れていく。そうやって大人になっていく。
そんな大人に、大切なものはなんなのかを、もう一度思い返させるような話でした。

「大切なことは目に見えないんだ」という一番有名な台詞。
それは、人それぞれ。愛・友情・絆、いっぱいあります。
あなたにとって、一番見えていない事はなんだろうと、考えさせられる作品でした。

映像化が困難だった原作。
原作とこの作品のリンクは、とてもうまくいっていると思います。
目に見えない大事な事。
王子とキツネ、飛行士・少女と老人の深い友情、そして別れ。
コミカルに揶揄された馬鹿らしい大人。
夢なのか、夢でないのか、想像なのか、の曖昧さ。
そして、死というもの…

死というものと書いたけれども、それはイマジネーション。
どちらも、それを明確にしていません。
読んだ、見た人の想像性。

どちらも訴えているのは、愛と友情と死と別れとイマジネーション。想像の重要さでもあると思うのです。原作では特に。
原作で、飛行士は子供の時にその想像性を大人に否定され、画家になることを諦めます。大人の想像力のなさに呆れ返ります。
映画での飛行士の家は、それこそ想像と創造に溢れた、素晴らしくごちゃごちゃしていて楽しく美しいものとなっています。子供心に溢れた夢のような世界です。
そして、老人のセリフ…つまりは原作の飛行士とリンクするセリフも、想像に溢れているのです。大切な人を思って空を星を眺め、わらっているかも、泣いているかも、様々な事を想像する事…

後半は、それを受け入れることの出来なかった少女が、かけがえのない友のために冒険にでるのですが、それも想像なのか、現実なのか、イマジネーションの世界です。  

原作とは、登場人物は同じでも、離れたストーリー展開をしますが、子供心に戻り、ドキドキハラハラしました‼

映画はCGですが、原作部分は和紙と紙粘土を使ったストップモーションアニメになっています。この美しさったらないのです‼光をあびて透ける王子のスカーフ。キラキラと輝く紙。本がそのまま現実化したような、素晴らしい質感。儚げで、脆く、美しく、本に入り込んだような、そんな気分になります。ずっとずっと、その世界に浸っていたい気持ちになれます。本当に素晴らしい‼
CG部分も、前述したように、夢溢れるお爺さんの家のウキウキ感‼それ以外の極端な画一的な表現と比べて、際立ちます。 というか、こんな家に住みたい‼

そして、寂しい少女と老人の友情と絆の深さに、涙が込み上げます。ふたりの幸せな時間。こんなの、有無を言わさず、涙がでるでしょう。少女は、きちんと、目に見えない大事なものをわかっています。老人と共に過ごした時間で、それがはっきりとわかったのです。
死についてももちろん考えます。大事な人との別れ。死。大事な人とのすれ違い、愛のすれ違い…

映画を見終わったあとで、原作を読み返してみました。声にだして感情こめて読んでみました。涙が止まりませんでした…最後は、笑いながら泣き、そして、声にならない声で読みました…
こんなにも、美しく、哀しく、しかし、死というものに打ち当たった人に対して優しいものだったとは…何万・何百万・何億の同じ様なものの中で、たった一つの大事なものを見つけられる事、それを大事に思う事、それが探してきたものだという事。大人はそれを忘れてしまいがちだという事…

映画の少女も老人も、原作の王子や飛行士もキツネも、固有名詞がありません。これは、あなたや私の物語なのです。あなたが、この彼らのどれかでもあり、どれでもあるのです。と、私はおもいます。

原作と映画がごちゃ混ぜになってしまったようなレビューで、まとまってなくてごめんなさい。ただ、是非見てほしいし、見たら絶対に原作を読みたくなるだろうし、読んだら作品の素晴らしさと、映画の素晴らしさを深く噛み締める事が出来るとおもいます。

そして、私は、まだまだ、大人になれていない大人なんだなと。それを認めて貰えるような、誇らしく思えるような♪ もちろん私にも嫌な大人の部分もあるけど、それを反省するような、なんか…… そんな感じになりました。無性に星を作りたくなったり、声にだして原作を読みたくなったりね♪

とにかく、あ~~‼‼疲れた‼あ~‼嫌だ‼と思っている大人に、大事な事や楽しい事はすぐそばにあって、それを見つけよう‼って思わせてくれる映画だし、本当に大事なものをきちんと心の奥まで教えてくれる原作でした。改めて読んで、宝物の一冊になりました。
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