Maki

フランシス・ハのMakiのレビュー・感想・評価

フランシス・ハ(2012年製作の映画)
3.8
ラストまで観て笑ってしまうタイトル、モノクロの映像とポスターのデザインそれだけで好きの要件を満たしてる。これカラーだと途端にアン・ハサウェイとか演じそうなコメディ物の王道ハリウッド映画になっちゃいそう。

好きなことだけやって、行き当たりばったりで、お金無くても気の合う友人と毎日バカみたいなことでワイワイ騒いでいた時代が私にもあったけど、27歳の頃にはもう人生にいろいろ妥協して現実を受け入れていくしかなかったなあ。ダメダメ続きでもある意味こんな風に自由に突っ走れる主人公が羨ましい。

主人公フランシスは、友人や、友人の友人や、元カレから「老け顔なのに中身は大人っぽくない」とか「ぜんぜんしっかりしてない」とか「がんばれ変人」とか言われちゃうし(実際かなりエキセントリックだし老け顔なのに服装がティーンみたいで洗練されてないしお調子者)
親友で何でも話せるサイコーの友人ソフィーと「私たち熟年レズビアンみたい」「よー!美人!愛してる」なんて無邪気に口にしてた天真爛漫さ。けれどそんなフランシスをよそにソフィーは、他に住みたい町に部屋を借りれそうだからフランシスとシェアしてた部屋を更新せず同居を解消すると言い出す。
凹んでる時に税金の還付があったからと食事を友人にご馳走しようとしたのにカードが使えなかったり、どうしても今日は自分がご馳走したい!そんな一心でお金を下ろしにATMを探し回り走って転んだり、プロのダンサーを目指しダンスカンパニーの研究生をしてきたのにカンパニーから次の公演からダンサーとして使うのを辞めたいと伝えられてしまうし。
踏んだり蹴ったりトホホな状況で内心すごく落ち込んでるフランシスなのに明るく振る舞って、そしてやっぱりかなり破天荒すぎて周りをビミョーな空気にしてしまう。

落ち着きのない彼女の空回り具合が身につまされ途中しんどく感じたりする。
しかしこの人って子供の頃からの感性そのまんまでこの歳まで生きてきたのかなって思わせるくらい純粋だったり、喧嘩しても友人を思いやったり、心配かけないように家族に弱音を吐かず振る舞ったり、ダンスのレッスン後の女の子が泣いている傍にただ黙って寄り添うフランシスの人柄の良さ皆んな感じてるんだよね。そしてフランシスが街中を駆け抜けてターンしたりジャンプしたり、やっぱり彼女はダンスが大好きで、自己を表現するため欠かせないものなんだと伝わる場面が爽快。
真夜中のパリの街や人々が行き交う昼間のニューヨークのストリート。デヴィッド・ボウイの『Modern Love』は何故こんなに人を走り出させるのか…

少しずつだけど、苦い経験を受け入れ前に進んでいるフランシスの姿がラストは描かれ、彼女の外見にもどこか自信が滲み出ていて嬉しくなる。
新しい部屋に越したフランシスの満足気な様子と相変わらずな雑さも 
haha‼︎ と笑ってしまう。

ダメな私で生きていいんだね。
キャッチコピーは〝ハンパなわたしで生きていく〟だっけ?
Maki

Maki