てる

アントマンのてるのレビュー・感想・評価

アントマン(2015年製作の映画)
4.2
面白かった。
マーベルぽくない主人公だった。そもそも犯罪者だし。犯罪者といってもテロリストとかではなく、泥棒で、こう言ってはなんだが、地味だ。頭の回転は早いようだし、ちょっとした科学技術は持っているが、運動神経が特別良いわけでもないし、もちろんスーパーパワーを持っているわけでもない。スーツを着たところで、能力は、身体が小さくなるのと、複数の種類の蟻を使役できるくらい。それだけ聞くとかなり地味だ。スーツのビジュアルも地味だ。
突出したところがないがないが、実はかなり強い。スパイとしてはこれ以上ないくらい役に立つ。地味な能力を使って戦うのが、なんとも胸熱な妙なヒーローだ。
過去のマーベル作品に比べるとコメディに富んだ作品だ。マーベル作品の売りといえば、CGを用いたド派手なアクションだ。そこが見所の一つであるのは間違いない。でも、アントマンは少し趣向が違う。小さい規模の戦いは、彼らの視点で見ると壮絶だ。ビームは簡単に人体を貫くような威力を持っている。一触即発な生死を賭けた戦いをしている。それなのに、引きの画になるとカバンがプールに落ちたり、おもちゃが窓の前に転がったりと、思わずくすりと笑ってしまう。その緊張感のある戦いと、気の抜けた実寸大の現実との温度差のバランスが上手い。
マーベル作品といえば、スーパーパワーを持っていたり、特殊な能力を持っていたりするが、彼の場合はスーツを装着していなければただの一般人だ。なので、スーツを使いこなす為の訓練の期間がある。その期間は非常に短いように見えたし、その短い期間で使いこなせるようになれるのであれば、ある意味、彼も特殊能力者でありそうなもんだが、いずれにしろ、マーベル作品では中々見ない場面だ。始めからパワーを持っているのではなく、きちんと訓練を重ねて強くなったアントマンに親しみを感じた。
風変わりなヒーローのアントマンの今後の活躍を期待している。次回作が楽しみだ。
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