なまにく

アパルーサの決闘のなまにくのネタバレレビュー・内容・結末

アパルーサの決闘(2008年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

何故か知らないけど、とんでもなくハマった作品。最初に観た時は共感性羞恥が凄くてウワ〜〜〜!!ってなったけど、エド・ハリスとヴィゴ・モーテンセンが仲良くやってるってところが個人的に楽しめる。百発百中この2人が好きだからである。

この作品きっかけで原作も読んだのですが、原作だとモーテンセンが演じたエヴァレット視点で話が進んでいっているんですね。それでいてヴァージルを尊敬している故に、アリーに翻弄される様子にどう反応したらいいんだろうコレみたいな。全てにおいて正しいと思っていた人が間違った方へ傾いてしまった時、どうやって自分自身に折り合いをつけていくか……という今でも通じるテーマを、ちょっとしたシュールさも混じりつつ西部劇と融合させている作品に思えた。
生死と隣り合わせの環境であるガンマンだからこそ正しさについて考えなければならないわけで。ずっとヴァージルに正しさを任せっきりだったエヴァレットが、初めて自分の中だけの正しさを信じて行動したんだろうなって。だから一貫してエヴァレット視点で話が進んで行ったのかなって。

映画の方は、まずエヴァレットが主役って部分が掴みにくい。ヴァージル・コールの大物感を全面に出していて、尚且つそれを演じるのがエド・ハリスだから説得力が凄い。それはいいんだけど、そのせいでアリーと話す酒場のくだりの落差が凄い。すごい嫌なおっさん感がする。そしてそれの説得力がエド・ハリスにあり過ぎる。合ってるんだけど、ズレてる。うまくコメディというか、軽い感じに落とし込めてない。

中盤まで、エヴァレットがただ見ているだけの印象しかないから、微妙な心境を描き切れていないと思う。
だから、原作通りといえば殆ど原作通りに進んでいくんだけど、原作を超えてる描写があるか?と言われたら正直微妙かもしれない。1時間半に落とし込んで分かりやすくした、という感覚。

あとこれは完全に私の個人的な意見だけど、 原作のヴァージルとの別れ方を使って欲しかったなあって気持ちがとてもある。
ハリス監督はこの作品のヴァージルとエヴァレットとの関係を深く突っ込まないからこそ心地良い関係を保ってる、みたいなこと(うる覚え)を言ってたけど、個人的にはそう思わないんだよね。
ここからの話はこの映画を単体ではなくコール&ヒッチシリーズの全体の話。このシリーズは3作しか翻訳されてないからそこまでしか読んでないけど、巻数を進めていくと、2人はお互いを尊重しつつ、対等な関係性になっていくように思える。
それで、その3作品に比べて、今作は2人の立場はフラットにみえて、エヴァレットよりヴァージルの方が立場が上。でも対等でもありたいから、感情を吐露するシーンが少ない。弱みを見せないようにしてる、ように思える。
だから、最後の決闘が終わった後に別れのシーンで誠心誠意の感情を乗せている……みたいな感覚で読んでいたんだけど、映画はそれもクールに済ませてて、う〜〜〜んって思う。勿論私の個人的な解釈だし、このシーンが好き過ぎるのもある。娼婦のケイティにはあんなに誠意籠ってたのに!って落差もある。

ただ、各キャラクターのキャスティングは素晴らしかった。勿論、好きな俳優がいるってこともあるけど、本作の主要キャラのイメージは原作を読んだ後もこのキャスティング以外思い付かないなって感じた。もう一回見た時、原作を読み返したときに変わっていくかもしれない。それもそれで面白そうではある。そのぐらいの気持ちにさせられるぐらいにはこの作品にハマってる。
なまにく

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