高橋早苗

夜のとばりの物語の高橋早苗のレビュー・感想・評価

夜のとばりの物語(2011年製作の映画)
4.0
昔々あるところに・・・
なんて口上が似合いそうな影絵アニメーションは
教訓めいたところが一切なく
なぜ?の謎解きもなく

…こんなお話がありましたとさ。と、ただシンプルに魅せてくれる。



「狼男」
濡れ衣を着せられた男
晴れて自由の身になり 婚約する

相手は 投獄されていた間
自分を信じ 支えてくれた人
・・・と思いきや
真に彼を愛し 手を差し伸べていたのは
婚約者の妹だった


狼男は妹の力で 人間に戻る
姉は 悔し紛れに言います
「私に勝ったつもり?
 この男は満月の度に狼男になるのよ」

妹が 静かに切り返す
「ええ。狼になっても愛してる」


狼男と人間の娘の 愛の物語
・・・という見方が一般的でしょうが

どんな己の姿も
ただ見留め、肯定した
己の中の片割れの話。
と観ると、まるで違った味わいです^_^


☆☆☆☆★


そしてもう一つ
このお話は異色。
「嘘をつかなかった少年」


固い愛で結ばれた
話す馬メロンギと 世話係の若者

隣国から訪れた 歌う馬ソマキと姫


自慢し合う王たちの賭けに従い
姫は 若者に名を隠し近づく
そして嘘をつく

わたしの病に唯一効くのは
メロンギの心臓だと


恋した若者は
彼女を失いたくない けど君を殺すなんてできないと
正直に告げる

メロンギはソマキに後を託し
自ら命を経つ


病が癒えたか確かめる前に
姿を消した娘

愛する存在も 恋した人も失い
泣き崩れる若者は
王に 正直に告げる

自分の過ちから メロンギを失ったこと
愛を無くし 陛下の信頼も裏切ったと


賭けをした王たちは
若者はきっと 程のいい言い訳を騙るのだと思っていたのでしょう
「つくづく驚かされた」と感嘆する

そして若者の前には 姫とソマキが

姫は 若者へ 己の愚かさを詫び
メロンギがソマキに託したものを告げ
若者が無くした 愛を差し出す


…彼の 愚直なまでの真っ直ぐさは
他の誰と比べるでもなく
周囲が、世間が、という他者目線もない
本当に、矢のような
真っ直ぐな、ただ只真っ直ぐな愛。

メロンギもそうね 真っ直ぐね^_^



異国の世界観と
山に朝陽が射す景色
そして歌

何度も繰り返して観ちゃう
クセになる味わい。
高橋早苗

高橋早苗