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チスルのcamusonのレビュー・感想・評価

チスル(2012年製作の映画)
3.2
2012年の韓国映画。モノクロ。

これまで韓国内ではタブーとされてきた
韓国政府による自国民の虐殺にスポットを当てた作品。

日本が敗戦により朝鮮半島から退くと、
米・ソ・中などの思惑が入り乱れ、政治的に混乱し、
朝鮮戦争になだれ込むわけですが、
その混乱期に、韓国政府による自国民の虐殺が行われました。

本作はその中でも済州島三・四事件を題材にしています。
同時期に起きた犠牲者20~120万人とも言われる保導連盟事件には及ばないものの、
島民の5人に1人にあたる6万人が虐殺されたとされています。

さて、作品です。
韓国軍による島民への無差別虐殺が進行する中で、
島民たちが穴に逃げ込むところから始まります。
すし詰めで入りきれないところに無理矢理入ろうとしたり、
それを追い払おうとしたり、
いかにも朴訥な島民をユーモラスに人間らしく描くところから始めるあたり、
悪くないと思いました。

エグい暴力表現は、韓国映画の特徴の一つだと思いますが、
本作は、直接的な表現は抑えられていて、
身内、知り合いが殺される心情を、丁寧に描いていると思います。

タイトルの「チスル」はジャガイモのことで、
洞窟に逃げ込んだ島民たちの貴重な食料なのですが、
小道具として上手く使われていて印象的です。

ごく普通の人間が殺す側、殺される側になり、
日常が、急転、殺戮の世界に陥った様子が、
良く描けているのではないかなと思いました。

と、そこそこ上出来な作品だと評価していたところ・・・

最後のテロップで、
米軍政下で焦土作戦は続けられたが、米軍政の顧問官は今なお沈黙している。
と示されます。

嗚呼。。。韓国らしいなと。
確かにアメリカが悪いのはそうなんだけど、最後にそれを言ってしまう。
自国民による自国民の虐殺を他国のせいにしてしまう。
ついさっきまで韓国自身が隠蔽してきたことについて、今なお沈黙とか言ってしまう。

まあ、日本のせいにしなかった分、百歩前進なわけですが。

総合的には、タブーに踏み込み、かつ、丁寧につくられた価値ある作品だと思います。
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