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夢は牛のお医者さんのOASISのレビュー・感想・評価

夢は牛のお医者さん(2014年製作の映画)
4.5
小学校の時学校にやってきた三頭の牛との出会いによって獣医を目指した少女高橋和美さんの姿を、26年間に渡って追ったテレビ新潟制作のドキュメンタリーの劇場版。

前に流した涙が乾かぬ内にまた次の涙が溢れてきて、顔面がグショグショになってしまい恥ずかしかった。
あれで泣かない人がいますか。
一年分は泣かせて頂きました。
26年間という長きに渡る年月を、移り変わっていく季節と共に成長していく様子を描きながらそれを86分でまとめ上げたのも好印象。

少年少女が牛と過ごした僅かな時間が、後の人生を変える程の体験として根強く心の中に残り、それが夢となる。
「夢は諦めなければ叶う」だとか「夢が叶うまでがゴールじゃない、叶えてからがスタートなんだ」というような事をよく漫画で目にする事があるが、この映画は夢を抱いてそれを叶えようと努力し、そして叶えた先にある残酷な現実を突きつけられても尚それを諦めないという「夢を叶えた先」まで描いている。
それを実在の人物が語る事によって生まれる夢の重み。
これ程までに説得力を持つ夢の描き方がありますか!?

いくら漫画や小説で登場人物達が夢を熱く語っても、それを叶えるのは作者次第という点でどうしても感情移入できない部分があったので、こうも真っ直ぐに努力し続ける現実の人物を見せられては心が動かないはずがない。
それを諦めるのも叶えるのも高橋さん次第だが、やはりそこには家族の存在がある。
生まれた環境や家庭の事情等、夢を抱くきっかけを与えるも殺すも家族や仲間次第というのは当たり前だが、それを映像で写すとこれ程までに破壊力があるとは。
街の人の彼女を見つめる目や、父や母との触れ合いを絶妙な距離感で写し続けるカメラの温かい視線も良し。

最後の曲は「卒業写真」では無く、子供たちが牛の卒業式で唄ったあの歌の方がしっくり来るだろうなとは思った。
小学校、中学校、高校、大学と全ての子供たちに見せるべき教科書のような映画であるのは間違いない。
「銀の匙」とセットで学校に置いて下さい。

@第七芸術劇場
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