このレビューはネタバレを含みます
「あんたも同じだよ 凡庸なる者の一人」
「私はその頂上に立つ凡庸な者の守り神だ」
「凡庸なる人々よ 罪を赦そう」
最期の作曲シーンから葬列、サリエリの回顧の締め括りまでの畳み掛けるようなラストに、鑑賞後しばらく放心してしまった。
人々を熱狂させ今も聴き継がれる偉大な作曲家の最期があんなにも呆気なく、尊厳も何もないみすぼらしい葬られ方をした痛々しさまでもが、奔放に生きたモーツァルトらしくもあって切ない。
それにしても、神に愛された才能を持つ狂人に凡庸で生真面目な人間が勝手に嫉妬し勝手に狂わされていく物語からは、自分が凡庸な人間であるからこそ、途轍もないカタルシスが得られるものだ。