あもてゃ

アマデウスのあもてゃのネタバレレビュー・内容・結末

アマデウス(1984年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

モーツァルトをもっとも憎んでいる人物だからこそ、サリエリからの彼への賛辞には真実性が宿っており、迫力があった。サリエリの心情を察するに、それは地獄のような日々だっただろう。本物の嫉妬とはどういうものなのか、解像度が上がった気がする。嫉妬とはどこまでも矛盾した感情なのだ。見下している相手に対しては嫉妬は生まれない。真に認めている相手だからこそ、その才能がどうにも妬ましいのである。サリエリに強く共感を抱いたので、今まで気づいていなかったが、思い返すと私にもそういう経験があったかもしれない。

余談だが、実存哲学の始祖であるキルケゴールが、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』を敬愛していた理由がようやくわかった気がする。キリスト者たらんとしていたキルケゴールだが、ドン・ジョヴァンニのような不届き者に共感を寄せるのは不思議だった。しかしこれを観て、どこまで真実かはわからないが、モーツァルトが『ドン・ジョヴァンニ』を、自身を罰する意味を込めて作曲していたとしたら辻褄が合う。キルケゴールはドン・ジョヴァンニにというよりも、それを創り出したモーツァルトの方に共感を寄せていたのではないか?というのも、キルケゴールも『誘惑者の日記』において、自身を罰するようなキャラクターを主軸に据えているからである。

史実はこれから調べるとして、まずはこの時代に、ここまで完成度の高い映画を撮れたことに対し拍手を贈りたい。

……

追伸:
本作を観たので、遂にアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』を再視聴する準備が整った。