ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。18世紀、神童と呼ばれ幼い頃から才能を発揮するも、35才で夭逝した天才音楽家。その死には諸説ありだが、「私が殺した」という男が1人…。モーツァルトによって人生を覆されてしまった、宮廷音楽家サリエリの苦悩と葛藤のヒューマンドラマ。
19世紀に流れた"宮廷音楽家サリエリがモーツァルトを殺した"なんていう都市伝説みたいな噂を基にした、フィクションの戯曲を映画化した作品。
実話のエピソードもありつつ、様々な場面で彩られるモーツァルトの名曲も素晴らしく、ユーモアもあって楽しめました。
18世紀、オーストリア皇帝ヨーゼフ2世に宮廷音楽家として仕え、幸せで充実した日々にいつも心から神に感謝していたサリエリ。
地道に努力を積み重ね、品行方正・真面目一徹に自分の人生を全て音楽に捧げてきた。
そこへ現れた天才モーツァルトは、礼儀知らずで下品でハチャメチャ。
その強烈なキャラにドン引きするサリエリ。
しかも、サリエリの一生懸命作った曲をモーツァルトがずけずけとその場で修正。
すると悔しいことに、魔法がかかったように見ちがえる。自分のメンツ丸潰れ…。
そんな残念な感じのやりとりが、どこかコメディタッチに描かれるので重苦しくならずに観れました。
しかし、そのモーツァルトの天与の音楽センスと才能に愕然とし、憤怒、憎悪、嫉妬…抑えきれない黒い感情がとめどなく溢れ、陰湿な嫌がらせに出てしまうサリエリ。
神よ、何でずっと真面目に努力してきて祈りも捧げてきた私にではなく、あんなヘラヘラした破天荒な男に素晴らしい音楽の才能を与えたのですか?
音楽を愛しているからこそ、モーツァルトの創り出す音楽の素晴らしさや凄さがわかってしまう。
悔しくて堪らないのに、その才能は認めざるを得ない。
圧倒的才能の前に自分の凡庸さが証明される失望感。
大抵の人間が誰しも経験したことある、自分の才能の限界に気づいた時の、自嘲・諦観・畏怖などの、複雑な苦悩や葛藤は肯けます。
そして、やり場のない憎しみは、そのままモーツァルトへ…
どんどんモーツァルトを影で追い詰めて堕ちていくサリエリは切なかったです。
ラストの、サリエリが美の極致に到達した時には胸を打たれました。
しかし、背負った業の重さは結局自分を押し潰し、身を滅ぼすことになるんだなと考えさせられました。
現代のTVCMやカフェなんかで曲が流れても、全く違和感なく常に新鮮な感動と美を与えてくれる名曲の数々を遺したモーツァルト。
ミドルネームの『アマデウス』は、ラテン語がルーツで「神に愛された」の意味だそうで。
その音楽から思い描いてた人物像のイメージが、本作でガラッと変えられたのも、新しい発見で面白かったです。(特に笑い声は一度聞いたら多分一生忘れられないと思いますw)
★1823年11月。ウィーンの街で自殺を図ろうとしたある老人が病院に運ばれる。
その老人は、かつてオーストリア皇帝ヨーゼフ2世に仕えた宮廷音楽家サリエリだった。
やがて、彼の人生の全てを変えてしまった1人の天才の生涯を告白し始める。
それは、天才音楽家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトについて。
「自分が殺した」というサリエリ。
この意味するところとは?
2人の間に一体何があったというのか、、?