KUBO

トークバック 沈黙を破る女たちのKUBOのレビュー・感想・評価

4.5
私が坂上香監督と初めて出会ったのは、10年前の宮古島パニパニシネマだ。だからこの映画『トークバック』は思い出深い作品だ。

当時はまだ碌な鑑賞眼を持ち合わせていなかった私は、ただただHIV患者の人たちが赤裸々に語る人生や、それを劇という形で発表するメデアという取り組みに圧倒されたのを覚えているが、改めて鑑賞して、カメラを通して彼らに寄り添う坂上監督の優しい眼差しと、おかしな偏向をかけずにあるがままを伝えるドキュメンタリー作家としての姿勢に感服した。

ローティーンの内に子供を産み、子供を養うために身体を売り、窃盗を繰り返し、刑務所に出たり入ったりを繰り返すうちにHIVに感染した女性たち。自分に価値がないと自暴自棄になる彼女たちが、全てを認め、隠さず、舞台の上で自らの人生を語り、叫び、踊る時、自信を取り戻した彼女たちの顔がある。

ご存知の方も多いと思うが、坂上監督は近作の『プリズン・サークル』で文化庁映画賞・文化記録映画大賞を、全国映連賞・監督賞を受賞。ドキュメンタリー映画監督として大注目の監督さんなのだが、なぜか宮古島でばったり会ったりする不思議なご縁もある。

『プリズン・サークル』へと続く坂上香監督の傑作『トークバック』。未見の方はぜひ。
KUBO

KUBO