“盲目のトニーレオン”、やっぱりカッコいい。
しかも、この作品、『インファナルアフェア』の監督の脚本家がトニーレオンと組んだ作品。
って、観るっきゃないでしょ、と。
1950年ごろの話。とても歴史の勉強になる。
中国国民党。
1919年10月10日、孫文が中華革命党を改名して発足。
1949年に共産党との内戦で敗れ、中華民国政府が台北に遷都した流れで、そのまま台湾に土着化した政党。
これはそっちではなく、内戦にいちおう勝利した共産党側から描かれる諜報活動に焦点を当てたサスペンス。
国民党の残党が台湾を中心に不穏な動きがあり、諜報活動している共産党。
しかし、暗号が変わったり、コロコロ周波数が変わったり、なかなか尻尾が掴めなくなる。
そこで、新たな諜報員、特に“耳の良い”人材をスカウトし養成して体制を強化する、となり、とあるピアノの調律師のところへ。
すると、その調律師のアシスタントに、“盲目のトニーレオン”。
彼も彼で目が見えない代わりに、異常な聴覚を持つ。
この“異常な聴覚”を表すための演出やシーンがとてもわかりやすくて良い。
ベタな描写とトニーレオンの独特のキャラクター。
調律師を連れてくるつもりが、その“資質”を見抜いてアシスタントを連れ変える女性諜報員。しかも彼は目が見えない。
本当に大丈夫かよ、という空気の中、試験が行われ、彼の技量が発揮される。
そこから彼は部隊のメンバーとなり、諜報活動のスペシャリストになっていく。
国の内部で燻る内戦の見えない鍔迫り合い。
“見えない戦場”で“見えない情報”を掴み、“見えない相手”と“見えない攻防”を繰り広げる。
派手な戦闘シーンはないが、水面下で情報の取り合いや、お互いの“腕利き諜報員”の潰し合いなど、とてもスリリング。
トニーレオンが恐るべき才覚で暗号送信を突き止める。
モールス信号を打っている相手の特性や性格、周辺環境まで言い当ててしまうプロットは先の展開も含めてワクワクする描き方。
この諜報部隊“701部隊”が、彼の力もあって少しずつ手がかりを見つける。
そして国民党の重要人物“重慶”にたどり着き、罠を張るが、、、。
暗号特定と解読はトニーレオン。
そこから足を使って現地に赴き、真相に迫るのはいつしか親友になったこの女性諜報員。
彼が掴めば掴むほど、彼女は危険の中に飛び込んでいく。
作戦が進めば進むほど彼は解読に奔走し、彼女は危険な諜報活動に。
そして、生活も変わり、それぞれの時の刻み方も変わってくる。
この2人の関係性。
スカウトと調律師のアシスタント。師匠と弟子。友と友。男と女。
2人にしかわからない距離感やテンポ。
置かれる環境も違い、仕事の特性も違い、人生も違ってくる2人であってもどこかお互いに“特別な何か”を感じあってる2人のやり取りがとても素敵で、切ない物語。
メインは重厚な内戦のスパイサスペンスで、並行して何気ないやりとりに潜まして垣間見える人間ドラマ。
「“聞こえない”なら“見えても”無駄さ」
この言葉の重み。彼らしさ。
正直、中国の内戦事情はあまり詳しく知らないからそこはどっちがどうとか、どっちが勝つとどうなるとか、あまり良くわからない。
だけど、そこで人知れず戦う“諜報”任務の緊張感と責任感、緊迫感、そして、繊細さ、切なさが存分に味わえる作品。
F:2017
M:235