OASIS

サイレント・ウォーのOASISのレビュー・感想・評価

サイレント・ウォー(2012年製作の映画)
3.0
共産党と国民党の衝突で内戦状態となった中国で、盲目の暗号解読のスペシャリストとスパイの攻防を描く映画。

トニー・レオン主演のサスペンス。
聴覚の発達した盲目の調律師という役柄を、目を閉じてニッコリと微笑む笑顔とやや刈り上げ過ぎな独特のヘアースタイルで演じるトニーから艶やかな色気が滲み出ている。
冒頭の点字風なクレジット演出や、街中を音だけを頼りに移動する主人公と追っ手のチェイスなどはビジュアル面で面白い。

スカウトされ、試験を受けさせられてモールス信号を見分ける技術を叩き込まれる主人公と、それに付き添う女諜報員とのロマンスが挟まれて、徐々に大物スパイである「重慶」なる存在が明らかになっていく。
「名探偵ゴッド・アイ」のアンディ・ラウよろしく爆食ぶりを見せ、数ある通信の中から怪しいものを探していくのだが、聴覚を利用しているというよりも頭が良い人が推理してるだけじゃないか?という演出に見えて盲目という設定が上手く機能していない印象を受けた。

「サイレント・ウォー」の名に相応しく、防音部屋に閉じこもって一歩も外へ出ない主人公と、「重慶」の正体に気付いた人物が辿る末路等それはそれは静かに事が進行する。
前半と比べ後半30分辺りからの追い上げが中々のもので、演説シーンが重なるクライマックスは、クラシックが流れる中大量の人が死んでいく様を徹底的に静かに描くという変わった作りでした。

一時だけ主人公の目が見える様になる瞬間があって、そこでの「思っていたよりも美しい」と言葉を口にするトニーの笑顔が映画の中で一番格好良いシーンだと思いました。あんな事言われたら女子は大洪水でしょうな...。

ドンパチが全く無い密室の中のスパイ映画ですが、こんな地味な題材で良くここまでサスペンス要素を膨らませれたなと感心する映画でした。
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