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アフタースクール(原題)のhorahukiのレビュー・感想・評価

アフタースクール(原題)(2008年製作の映画)
3.9
臭いものには蓋!!

有名人の亡くなった後に、メディアが故人の善良さや偉大さを全力で周囲に植えつけ神格化しようとする「現象」の高校バージョン。学校で有名人だった双子美女が薬物摂取で亡くなり、その2人のメモリアルビデオの製作を任された主人公ロブが、残された者たちの「ありのままの反応」を撮ったら、先生に怒られて「編集」されちゃう話。

最近話題の『悪魔はいつもそこに』が『The Devil All the Time』だってことに最近やっと気づいて、今更ながら予習中。本作はアントニオカンポス監督の長編デビュー作らしい。まだまだ日本に入ってくるの先だと思って油断してた…😅あとエズラミラーくんの初主演作?でもあるらしい!

ネットに転がってるホームビデオなり、首吊りや殴り合い等々の残酷な映像だったり、ポルノだったり。そういったものが意図をもって製作された創作物なのか、リアルをそのままに映し出した「本物」なのか。PC画面の向こう側にある(はずの)アングラな現実に惹かれるロブは、校内を撮影してる時に偶然にも有名人双子美女が血を吐いて死亡する凄惨な現場に居合わせてしまう…。そしてその出来事が彼の心にある「直視を避けてきた感情・自分」と向き合うきっかけとなってしまう。

暴力なのか、死の気配なのか、それとも死そのものなのか。そういったことにロブが性的興奮を覚えているかのような描写が冒頭からなされ、ついにはリアルな「死」を目の当たりにすることで、「性」へと行動を移し、それは「生」であることの病的な快楽へと転嫁する。「自分が良い人間だとは思えない」と母親に溢すロブは、自身の中にある「悪」を自覚している。そのロブが、カメラ越しに死が齎した結果や反応を撮り続けることで「ありのまま」を作り上げるわけだけど、それは自身の内面を写し鏡のように覗き込むことでフィルムに焼き付ける行為という側面も持ち合わせている。

その完成したメモリアルビデオは結局校長によって「なんやこれ!こんなもん全校生徒に見せれるわけないやん!」って否定されるのだけど、彼にとってはカウンセラーにも親にも打ち明けられなかった内面の吐露でもあるわけで、内面のリアルな悪を無自覚のままに当然のものとして蓋をする人間のリアクションの気持ち悪さをとことんまでに植えつけてくる。だから彼は蓋がされずに内面から漏れ出てきた「ノンフィクション」を捉えた(かもしれない)映像に惹かれ続けてきたのでしょうね。そして自分もそれを撮ろうとしたんやろね。

全体的に固定カメラによる長回しが多用されているために、キャラクターたちの繊細なリアクションがダイレクトに伝わってくるから造形に説得力があるし、画面外にいる人物との会話や、スクリーンの枠で人物を切り取り体の一部しか映さないような映像が多く、普段自分の視界が捉えているものの背後に更なる全容が広がっているのだという人間に対する視野の狭窄が感じ取れてずっと面白かった。これはマジで『悪魔はいつもそこに』も期待できそう👍というかコレ完全にホラーだと思う。怖すぎるし気持ち悪い…😱
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