るるびっち

ミスターGO!のるるびっちのレビュー・感想・評価

ミスターGO!(2013年製作の映画)
3.4
水島新司の漫画『野球狂の詩』に、ゴリラが入団する話がある。
日本では無理で、最後は大リーグに向け渡米する所で終る。
本作の漫画原作者は、『宇宙黒騎士』というガンダムもどきのアニメ関係者なので、またやっちまってんじゃねえか~?
まあ著作権を守らない位だから、ゴリラに野球位させるだろう。
それでも、中々ファンタジックで楽しい映画だった。

純粋性と邪悪性をバッティングさせるのは正しい描き方だろう。
黒をベースにすれば白が引き立つ。
ゴリラを巡る大人たちの金儲け主義を見せる程、調教師の少女とゴリラの純粋な絆が引き立つハズだった。
しかし本作は、少女が金の亡者のエージェントと一体化してしまうので、少女とゴリラの絆の純粋性は薄れ、ゴリラは孤立してしまう。
ゴリラの気持ちを誰も汲んでやらないのだ。
少女はエージェントと意気投合するのではなく、彼に反発して金よりも大事なものを示さねばならない。
少女も金の亡者に見える為、ゴリラが可哀想になってしまう。
そうなると、ゴリラの超人的な活躍による爽快さも薄れる。

日本のドラマだと逆に純粋性ばかりを強調して、甘すぎて胸焼けする。
日本人と感覚が違うのか、ゴリラに対して少女はドライだ。
足を痛めたゴリラに走るよう強要する。
「もう、走らないで」と、傷ついたゴリラに野球を強いる大人たちに反抗するという事にはならない。
少女とゴリラは心の底で繋がっているから、そこはOKということなのか?
日本性のイタズラに甘すぎるドラマを観るとしょっぱい物が欲しくなるが、実際にしょっぱい韓国映画を観ると甘さが欲しくなる。
観客とは天邪鬼なものである。
それでも最愛のゴリラを借金返済の為に利用した事を反省して、少女は金からゴリラに愛を向けるべきだった。
ゴリラにどこまでも愛されてるから成り立つが、守られるばかりではなく、最後は少女の方がゴリラを守れば、もっと純粋性が引き立つファンタジーになったのではないか。
結局バランスなのである。
甘すぎるのもダメだが、しょっぱいだけもいかがかと思う。
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