のい

ヴィオレッタののいのレビュー・感想・評価

ヴィオレッタ(2011年製作の映画)
3.6
イリナ・イオネスコの写真集は遥か昔、学生の頃に買って今も持っている。
退廃的な独特な世界観は当時も話題だったし、影響を受けたアーティストは多いと思う。私もかなり影響を受けた。
数十年たってこの映画を見て、やはりこうした世界観には惹かれてしまう自分もいるし、同時に子供にとっては虐待に他ならない事もわかる。
写真集を買っていた当時は全くそこまで考えが至らなかったが…

普通の女の子から激変していく少女の姿は痛ましくも美しい
嫌っている母親の退廃的なセンスは確実に少女の中にも刻まれていて、少女自身の感性になっていく。
学校にあの格好で行ってしまうのは、母親とはまるで別の感性の持ち主だとしたらあり得ない事だ。

そういう意味で監督自身の中にも潜んでいる退廃美への嗜好みたいなものも感じられ、複雑…
ただ、母親の要求であろうとも自らの中で一線を超えさせなかった強さがあってよかった。完全に母親にスポイルされきっていかない所に同じくアーティストとしての強靭さを感じた。

他の虐待ものとは一緒には扱えない複雑さを感じる作品

時代と共に常識は変わっていくのだな…と改めて感じるし、私自身も精神的虐待を受けていた側の子供なので、学生当時はこの母娘の退廃的な世界観にどこかカタルシスを得ていたのは確か(まさに破滅的な死の匂いのする部分に)。
それは皮肉なことに、虐待を受けた者の感性から生まれていた作品であったからこそ得られたカタルシスだと今も感じている…
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