むさじー

リスボンに誘われてのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

リスボンに誘われて(2012年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<退屈な人生?そう思ったら旅に出よう>

原作はスイスの作家で哲学者のパスカル・メルシェの小説「リスボンへの夜行列車」。
過酷な時代にあって、若者は情熱的な恋をし、民主化革命の活動に生きた、そんな生き方に憧れもする。
それに比べると自分の人生は何と退屈でつまらないのだろうと思う。
老境にさしかかった身であれば尚更のことである。
しかし、時代に抗い、闘いに生きた短くも充実した人生が、真に本人たちが望んだ生き方かといえば、そうとも言いきれない。
もっと自由で、自分の気持ちに沿った生き方があったかもしれない。
ライムントも、自分の過去を振り返り、これからの人生に向き合い、激動の時代と違って、無意味で退屈と思っていた自分の人生に少し光が射しかかるのを感じている。
衝動的にリスボン行きの列車に乗った時点で、唐突に人生の変換点を迎え、過酷な時代の生き方を知る。
もう一つの変換点が、偶然がもたらしたマリアナとの出会い。
多分、彼女の中に自分の存在意義を見出し、二人の新しい人生が始まりそうな素敵なエンディングである。
原作は未読だが、多分もっと哲学的な内容だと思う。
しかし、映画も十分に文学的・哲学的な内容で、美しいポルトガルの街並みは映像でしか味わえないし、ドラマチックな展開も映像表現ならではの佳作である。
むさじー

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