あきしげ

紙の月のあきしげのレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
3.5
彼女は夢の中をずっと歩いていた。

良かった点。

・宮沢りえの美しくも華奢な姿
・後半で存在感を示す小林聡美
・リアルに描いた銀行での横領
・クライマックスでの心情吐露

悪かった点。

・夫があまりにも脳天気すぎ
・何事もスムーズに行きすぎ

角田光代の同名小説を実写映画化した作品。
同年にはテレビドラマ化もされていました。

本作を借りたきっけかはパッケージ。
そこに映る宮沢りえが美しすぎます。
まるで絵画のようなパッケージです。
それだけに引き込まれた感じの作品。

だから内容が横領した犯罪者の作品とは知らず。
宮沢りえにとって本作が7年ぶりの主演作です。

線が細く声も消えそうな弱々しさ。
アイドル時代とは違ったイメージ。
今の宮沢りえだからできる役です。

最初は銀行員として堅実に生活をしていた。
それがひょんな出会いからすべてが変わる。

人間が変わるきっかけは色々とある。
しかし、本作は基本的な男女の関係。
しかも、それは許されない不倫関係。
女性は退屈な日々からの脱却を望む。

時代はバブルでみんな羽振りが良かった。
だからこそ起きた横領事件だと言えます。

とにかく、宮沢りえが素晴らしいです。
最初と最後まで言動はほぼ変わらない。

それなのに解放された意志の強さが実に恐ろしいです。
ずっと平凡で地味な生活を送っていた女性が変貌する。
それを補う為に何度か出てくる回想が最後に効果発揮。

主人公には元からその素養があった。
これがちょっとしたきっかけで解放。
そこから怒濤の如く様相が変わった。

確かに主人公が送った夢の生活に憧れる。
だが、それは自分が稼いだ金という前提。
他人の金に手を付けた幸せなどまやかし。
一時だけの幸せはクスリと変わりません。

こういう事は実際にあってもおかしくない。
人間はどこで歯車が狂うか分からないです。
自分は大丈夫と言っても実際にそうなると。
それを考えただけでも恐ろしくなるだろう。

本作は欲望に歯止めが利かなかった人間の心情を描く。
普通ならば倫理観や理性が働いて止めてしまうところ。
でも、それが仮に上手くいってしまったらどうなのか。
それに加えて、その素養を持っていたらどうなるのか。
本作は誰にでも起きてもおかしくない現実をみせます。

本作は宮沢りえが中心だが、後半の小林聡美。
主人公とは正反対の立場とも言える登場人物。
後半での活躍と存在感は主人公に並びました。
これは小林聡美だからこそできる所業だろう。

本作はなんと言ってもクライマックスでの心情吐露。
回想を交えた主人公の信念はそこから間違っている。
だからこそ横領を成し遂げる事ができたと納得する。

本作はパッケージだけだと思っていました。
期待はあまりしていなかった分、楽しめた。

しいて言えば、主人公にもっと強烈な輝きが欲しかった。
そうすれば、間違えなく個人的な邦画ベスト3になった。
あきしげ

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