一人旅

グレート・ビューティー/追憶のローマの一人旅のレビュー・感想・評価

2.0
第86回アカデミー賞外国語映画賞。
パオロ・ソレンティーノ監督作。

ローマを舞台に、65歳の作家の人生の振り返りを描いたドラマ。

上映時間140分超で綴られた懐古ドラマで、65歳の作家:ジェップを主人公にして、初恋の相手が亡くなった知らせを聞いた主人公が自身の人生を振り返っていく姿を過去と現在を交錯させながら映し出しています。

“若さ”に執着する人々が美容外科医のもとに列をなす異様な光景や、退廃的で騒乱的なローマの若者文化が映し出されるなど、演出・映像面でフェリーニに対するソレンティーノ監督の憧れを感じ取れる作品です。

冒頭の、夜のクラブで踊り狂う若者たちの乱痴気騒ぎに自ら参加しつつもどこか冷静な視点で佇む主人公に始まる本作は、表面上の虚飾的生活の裏側に秘められた主人公の本質と儚き過去の面影を対比的に映し出しています。ローマという魅惑の都市が醸し出すムードに埋没して生きてきた主人公は、初恋の相手の死をきっかけに自身の心の奥底に眠る静かで穏やかな過去の記憶を呼び覚ましていくのです。生と死、老いと若き、愛と孤独といったモチーフをローマの街に表出させた男の懐古ドラマです。

終始淡々としている上に掴み所のない作劇ですが、レーレ・マルキテッリによる音楽が物語の中に絶妙に溶け込んでいますし、何より古都ローマを詩情豊かに映し出した映像の数々は圧巻の美しさです。エンドロールにおける長回しの河沿いの風景も印象に残ります。
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