ないで

グレート・ビューティー/追憶のローマのないでのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

 最初、主人公の嫌味なマチズモぶりに鼻白みながら観ていたのですが、彼が「ジェップ」と呼ばれているのに気付いてからは面白くなりました。彼はきっとローマを象徴する人物でありながら、戸惑った瞳で彷徨い続ける異邦人でもあるのですね。
 この街の女はみんな抱いてきた、みたいな設定の作家ジェップさんですが、老齢に差し掛かって人生のミューズを見失いかけている。パーティで出会ったリッチな美女とは盛り上がらず、取材相手の前衛芸術家は男性憎悪に満ちていて、最近は隣室の謎めいた男の方がよっぽど気になる。色男として生きてきたはずが、自分のセクシャリティまで揺らぎ始めている(という描写なのかなと思いました)。
 このままジェップさんの当惑顔と共に豪華絢爛な「男とは、女とは、人生とはこういうもの」的映像を眺める映画なのだろうか・・・と思い始めたところで、インチキ興行師みたいな男に伴われた「聖女」が登場して、長い夜は明け、主人公に啓示がもたらされます。確かにこんな奇跡が起こるのは、滑稽なほどに荘厳で美しいこの都市以外ではあり得ないのかも知れないです。
 この監督の(結局のところ)マッチョなスタンスはモヤるところもあるんですが、映像も音楽もとんでもなく美しくて参ります。
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