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THE DEPTHSのcyphのレビュー・感想・評価

THE DEPTHS(2010年製作の映画)
3.7
濱口竜介こんなんも撮るんや…と終始なる 『寝ても覚めても』みて、職業作家としての濱口竜介の手法・手腕を初めて知ったように感じたけど、もうずっと前から彼は職業作家だったのか そうかってかんじ

日韓共同制作だから舞台は東京だけど日韓の俳優がそれぞれの国の人間を演じていて、韓国語と日本語が半々くらいで混じり合う しかもヤクザ、男娼、男たちのいろんな形の情欲が徐々に花開いていくよこしまな三角関係 すぐ北野武とか黒沢清とか言うのたとえ正しくてもなんなんって思ってしまうけど、これは完全に彼らの系譜そのままな映画って思わざるを得ない

言葉の壁、国の壁、性の壁、職業の壁 はっきりと聳え立っていたはずの様々な壁が、韓国からやってきた写真家ソヒョン(顔がずっと最高)と彼の身体の一部であるカメラがそれらの壁を次々と歪ませ溶かしていく というより、深く潜れば壁に隔たれたそれらはぜんぶ同じものだったのだとつまびらかにしていくっていう映画

対話劇というより関係性をモチーフにしたゲイノワールってかんじなので濱口竜介の作家性はきわきわまで抑え込まれてるけど、だからこそ彼お得意の手法 交通機関(本作だと特にタクシー)を駆使した映像表現なんかを見つけるとはっとする 『永遠に君を愛す』へのアンサーソング、あるいは『親密さ』への助走って観る人誰もが思えるのは面白い

石田法嗣くんはカラックスのアレックスによく似てる 一見ぱっとしない青年が男娼として、被写体として、どんどん男たちを飲み込み堕落させていくっていうザ・BLなストーリーが彼の眼光によって"ぎりぎり現実に潜んでそうなフィクション"くらいまでちゃんと落としこまれていてえらかった いい仕事 『不気味なもの〜』も楽しみ
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