ショウジ

フォーリング・マン 9.11 その時、彼らは何を見たか?のショウジのレビュー・感想・評価

3.5
9.11の時に撮られて新聞に掲載された、ビルから垂直落下している人 ”フォーリング・マン” が一体誰であったかということを中心に据え、被害者遺族の死生観について描かれたドキュメンタリー。以前そこまで言って委員会NPで取り上げられていて、常々観たいと思っていたので借りた。

作家のトム・ブライリーが ”フォーリング・マン” の写真に興味を抱き、ニューヨーク市の検死局にあの日何人がビルから飛び降りたのかを問い合わせると「飛び降りた人はいません。彼らは爆風で吹き飛ばされただけです。自分から飛び降りた人などいません。」と返された、というエピソードが印象に残った。
ブライリー氏の「飛び降りた人々がないがしろにされていると感じました。不穏な死に方だとして疎んじられ、他の英雄的な行為ばかりが強調されました。飛び降りる行為が英雄的かどうかはさておき、目を背けたくなるような死に方をしたからといって排斥すべきではありません。」という言葉は全くその通りだと思った。

最初にフォーリング・マンではないかとされた男性の奥さんと娘3人が
「彼が飛び降りるわけがない。家族と信仰を裏切るようなことは絶対にしない。」というようなことをインタビューで答えるのだが、どこにも逃げられず、熱くて息苦しい状況下でまで自分自身のことではなく家族と信仰を優先して重んじなければならないのか?そんなことを言う彼女たちこそ亡くなった家族のことを尊重出来ていないのではないかと思った。
あと「自殺した人は絶対に地獄に堕ちる」とも彼女たちは言うのだが、キリスト教徒って本当に不自由だなと思ったし、一酸化炭素中毒で意識を失って焼け死ぬか、飛び降りて死ぬかの2択を迫られた人間に対してまで厳密に自殺=地獄行きというルールを守るなんて、ずいぶん狭量で融通の聞かない神様だなと思った。

私はどういう死に方でも死んだ後の行き先は「無」で、天国も地獄もないと思っている。ただ、飛び降りた人たちと同じ状況になった場合、私は飛び降りられないだろうな…と思った。飛び降りた人たちは勇気も度胸もあると思う。
ショウジ

ショウジ