しょう

カラスの飼育のしょうのレビュー・感想・評価

カラスの飼育(1975年製作の映画)
3.7
こんなの素晴らしい以外のなにものでもない

これだよこれ。

「無防備な子供」であるからこその思想と行為が本作のテーマであると思うが、そのテーマで考えると邦画の「害虫」がかなり類似している作品なのではと考える

しかしフワッとしたものが似ているだけであって細かく見てみるとかなり大きな差がある

「害虫」では主人公が大人のふりをする(背伸びをしている)ような子供であったが、本作の主人公アナは子供の部分を保ちつつも所々で大人であり一枚上手な考えを持てる子供であった

この2作品でのこの性格と思想の差はかなり重大であり大きいものだと感じる

そして「害虫」と違う点でもう一つ大きかったのはアナにはまだ心の拠り所である兄弟の存在があったこと

これはかなりアナの人格形成において救いだったと思う

だからといって「害虫」よりもアナの方が環境が良かったかというとそれは違う

今は亡き大好きな母の苦しみを小さいながら見続け、父の不倫の目撃と死を目撃し、叔母からの余計なお世話(とアナが思ってるだけ)を毎日浴びさせられる彼女はとても苦しかったに違いない

それゆえに常に真顔で何を考えてるかわからない「無心」な少女になってしまったのだ

アナはまだ9歳であるからこそ母に依存するもの

その結果この年での早い母の死によって具現化した妄想が彼女の理想であり幸せになってしまった

妄想の中でのアナの笑顔は本当に素敵で無邪気だったのが無性に苦しい....

しかしそんな妄想の母は母であってもう1人の自分でもある

そんな2分裂してしまったかのようなアナの残酷さは決して映画だけでなく現実でも起こりうる可能性がなきにしもあらずであった

そこが本作の1番怖いところではないか

「死んで」と軽々しく口に出せてしまう9歳だが今の時代そんなことを普通に言ってしまう小学生もそんなに少なくはない

だからこそ軽々しく犯罪にまでも手に染められてしまう可能性があるということだ

その悪の対象がアナにとってはしっかりとできてしまったのが恐ろしい

叔母は本当はただのいい人であるとは思うがアナにとっては邪魔者でしかなかったのは彼女がまだ子供だったからなんだと思う

純粋が故に残酷性を持ってしまった少女という題材はかなり自分に刺さることがわかった

今回円盤を買って正解だったなと

何回か見てアナについてもっと知りたい

子供目線で非常にどのシーンも好きになれる素晴らしい作品でした
しょう

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