ハニルくん

ソロモンの偽証 後篇・裁判のハニルくんのレビュー・感想・評価

4.0
前編・後編としてつくられた宮部みゆき作品。とにかく前編がとてもよくできていて、何より子供たちが皆、真実に立ち向かっていこうとする姿がメチャクチャ感動的で、本当に涙なしには見られない。

そのため、どれほど期待と興奮で後編を見始めたか分からないくらいなのだが、本来この映画の真骨頂であるはずの子供だけによる疑似法廷シーンが展開し、「推理もの」としての真実を明らかにするパートである後編が、はっきりとあまり面白くなかった。どう考えても、前編の力量以上にハラハラドキドキさせて面白くならなければならないはずなのに、そうならなかったのはなぜか。

それは、そもそも、恐ろしい事件が繰り返す現実の中で、中学生の子供たちが自分の心に真に向き合っていく、という流れが感動なのであって、トリックを推理したり、種明かしをするような過程は、その流れにふさわしくはなく、その部分自体は特に感情を動かされる要素がないという理由だろう。

その上、前編があまりに感動的で子供たちの真摯さがホンモノであればこそ、当然、後編にそれを裏切るような、詐欺師的大どんでん返し展開を準備したり、すべての感情ラインをぶち壊したりすることなどはできないのであって、明かされる真実そのものは、ほとんど予想されるとおりの延長とならざるを得ないのである。

そういう意味で、これは「推理もの」である必要がなかったのであって、「推理もの」というジャンルに押し込めることで、後編を種明かしと大団円のパートにするしかなくなり、ラストもいい具合にすべて解決したという結末にしなければならなかった、ということに「しらけ」が見えてしまったのだろう。

ただ、主に前編を中心として本当に感動的なすばらしい作品であったし、もしも後編なしでうまく完成させたのだったら、たぶん私の生涯に記憶すべき1本となっていたかもしれないということ。そして後編も、前編ほどの衝撃がなかったというだけで、決して感動的でなかったわけではなく、よくまとめてくれたことに感謝したい。