桃子

ブレイン・ゲームの桃子のレビュー・感想・評価

ブレイン・ゲーム(2014年製作の映画)
4.2
「凡人でよかった…」

巣籠り生活をしていると、運動不足になる。毎日映画ばかり見ている私に夫が「太るよ」と言った。実際、じわじわと体重が増えている。見るに見かねた夫がエアロバイクとアイパッドを取りつけられるスタンドを買ってくれた。この最強グッズを使って初めて見たのが、この映画である。
予備知識ゼロで見て驚いた。まるでしりとりのように、コリン・ファレルが出演していた。それも2015年度公開の映画である。偶然が続くのでほんとにびっくり!ファレルも同じ時期に「ロブスター」とこの映画の撮影をしていたのかぁ。
もうひとつ驚いたことがあった。もともと、かの「セブン」の続編として企画されたのだという。続編の制作が頓挫したため、全く別の話として作られたようだ。警察によるシリアルキラーとの戦いという点は共通しているが、たしかに「セブン」の続編ではない。シリアルキラーが連続殺人をするその動機が、似ているようでいて似ていない。
凡人には想像もできない超能力を持つ人間というものは、日常生活を送るのも大変なことがあるのだろうなあと思わせられる。昔、霊感の非常に強い友人がいた。彼女は病気で若くして亡くなってしまったのだけれど。一緒に電車に乗っていた時、とあるJRの駅のホームに目をやって「あ、またあの人が立っている」と言うのでそっちを見たら、誰もいない。私には全く見えなかった。そういうことがしょっちゅうあった。普通の人に見えないはずのものが見えるのは、怖いとも言っていた。私はそういうものを全く見たことがないのでわからない。でも、よくホラー映画を見ているので(笑)、なんとなく想像はつく。死んだ人は生きている人に何かを伝えたい時、霊感の強い人にすり寄ってくる。あ、「ゴースト・ニューヨークの幻」を思い出してしまった…
話が脱線してしまった。要するにこの映画の主人公ジョンは、とんでもない能力の持ち主で、もし私にこんな超能力があったら、たとえば街中を歩いているだけで辛くてたまらなくなると思う。知らない人ならまだいい。家族だったら胸が張り裂ける。自分が凡人でよかったとつくづく思った映画だった。
アンソニー・ホプキンスは相変わらず素晴らしい。この俳優さんは、台本を徹底的にチェックして台詞を暗記し、その上で自分なりに自然に演技することをモットーにしているという。デイ=ルイスやデ・ニーロのように撮影前に役作りをするタイプの人とは正反対である。好みはあるだろうけれど、私はこちらのタイプの方が好きかもしれない。落ち着いた、燻し銀のような深みのある演技は見ていて飽きないし、何より気品のようなものまで感じることができる。そして、映画そのものがワンランクアップしているように見えるから不思議である。
桃子

桃子