カッチェ

ライト/オフのカッチェのレビュー・感想・評価

ライト/オフ(2016年製作の映画)
3.4
感想①「短編映画に出てくる方のフォルムを使ってほしかった」
YouTubeに投稿された3分弱の短編ホラーが驚異的な再生記録を達成し、それがジェームズ・ワンの目に留まり映画化された今作。その短編ホラー「Lights Out Who’s There Film Challenge (2013)」を投稿した無名のデヴィッド・F・サンドバーグ監督が大抜擢され長編映画デビュー。
ただ残念だったのが化け物のフォルム。短編では化け物っぽかったのが映画では幽霊タイプに。個人的には短編映画に出てくるタイプの方が怖かった。ただいつも投稿される短編動画の主人公が監督の奥さんなのですが、映画本編でも彼女が出てきたのは嬉しかったです。

感想②「古典的だが新鮮」
低予算が多いホラー映画の中でも超低予算490万ドルで作られた作品ですが、興行収入は全米だけで6500万ドル以上を記録。すでに続編も決定しており、監督が無名だったデヴィッド・F・サンドバーグということもあり、今後のホラー界がより活発になるんじゃないかと期待しています。
これは音で驚かせる古典的なタイプの映画ですが、電気を消すと姿を見せ近付いてくるという設定は面白くて新鮮。監督は他にもYouTubeに短編ホラーを投稿していて、どれも面白いです。長編になると話を深く掘り下げないといけない部分もあり難しいでしょうが、初監督ながら冒頭から謎の不気味な存在が登場するのが斬新で良かったです。ホラーはじっくり徐々に姿を現すことが多いですが、監督は短編ホラー出身であり81分映画ということもあって出し惜しみがなかったです。

感想③「姉弟の怖がり方が良かった」
父親が居なくなり鬱病になってしまった母親とうまくいかず家を出てしまった姉のレベッカと、母親が再婚した相手との間に生まれた弟のマーティン。まずレベッカを演じたテリーサ・パーマーが可愛い。ツンツンして気が強くロック溢れる内装をした家に住んでいるので、正体不明の存在にも強気なのかと思ったら、本気で怖がってるように見えるくらいリアルな演技で良かったです。化粧が濃いので、泣いたあと目の下が黒くなるのも可愛かった。
マーティンを演じたガブリエル・ベイトマンは、アナベルで主人公夫婦と同じマンションに住む絵を描いてた少年役で出てましたね。この映画では彼の演技がとにかく素晴らしかったです。母親に付き纏う謎の不気味な存在に襲われ一度はレベッカの元に逃げ込みますが、やはり自分が母親を守らないといけないと家に戻るマーティン。母親との関係が修復できない姉を、まだ子供なのにそっと諭したり大人びています。そのシーンの表情が素晴らしいのですが、襲われてる時は子供らしく泣き叫んだりレベッカに置いて行かれると怒ったり、とにかく表情のバリエーションが多彩。恐怖体験をきっかけに、成長しようとする少年を見事に表現していました。

感想④「彼氏が良い人すぎる」
レベッカは8ヶ月の付き合いになるブレットがいますが、彼のことはお気に入り君と説明し彼氏とは認めません。複雑な家庭事情もあり、素直になれない彼女。逆にブレットはレベッカのことを愛していて、靴下の片方だけを彼女の家に忘れて行けばまたここに来れるとか言っちゃうような健気さ。鬱病の母親と喧嘩した彼女を諭し、お母さんにあんなことしたらいけないとか言ってくれる人。レベッカが怪奇現象でおかしな言動をするようになっても、頭がおかしくなったと変人扱いせず傍に居て彼女の言葉を信じてくれるブレット。女主人公のホラー映画では珍しい、イライラするタイプの夫や彼氏じゃないのがなにより良かった。

感想⑤「今後に期待」
この映画は初監督作品と81分という短さもあり、ちょっと曖昧になってしまっている部分も多くありました。ホラーをたくさん観る方によっては、怖くないし話も単純で面白くないという反応もあるかもしれません。ただ初監督で超低予算作品なのに、スプラッター描写なし派手な演出もないのにこれだけ怖くまとめ上げたのは凄いと思います。監督の次作はアナベルの続編であり、さらにはこの「ライト/オフ」の続編製作も決定しているので今後に期待ですね。
カッチェ

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