万田邦俊監督作品。
犬になること。それは社会の犬、国家の犬といえば侮蔑的な表現だが、なぜか快感を得るときがある。
私たちは人として、あるべき決断をして自由を行使するのがよいとされる。しかし本当にそうか?誰かに決断をしてもらって、首輪を繋がれたまま自由に散歩をしているほうが、もしかしたらよい生なのかもしれない。本作の彼女のように。それは「主体」の秘密に関わっている気がする。
結局、彼女は孕むことによって人に回帰していくのだが、それはどうかと。他にも人への回帰はあるのではないだろうか。例えばケアといった仕方で。
ただし説明シーンの入れ方ー写真が貼ってあるパーテーションを登場させるーやライティングー路上で男が犬の格好をする時、居酒屋の提灯が消える。それによって適度な光度になり、周囲でお店が閉まっていくという説明にもなっているーはとても勉強になります。そしてエサとしての食べ物の汚さ、気持ち悪くて最高です。
蛇足
オープニングシーンが『悲愁物語』との手法と一緒。物語の鍵となる首輪や餌のお皿やおもちゃを写真的なショットでみせる手法。それが鈴木清順監督の手法かどうかは勉強不足で分からないが、画が決まっててよい。