子供を身籠った妻に逃げられた中年男(山谷初男)が、妻と瓜二つの容姿をもつ婦人(志摩みはる)を奴隷化しようと企む。「なぜ人間は暴力をふるうのか?」をテーマにしている、ピンク映画。
厭世家・厭人家の思考をストレートに描写しているところが最大の醍醐味。本作の主人公は、人の心に潜んでいる本音と建前を嗅ぎとり、人間社会の不条理に矛先を向けている人物。自我が誇大化した男と被虐待者となる女の凄まじい衝突劇が繰り広げられる。
後半部に入ると、男というものは女性に対して「聖性と母性」の両方を要求しながら、ジタバタさせていく人間であることが表現される。さらに、過去にしがみつく男と未来を見据える女の、性差までもが描写される。
「60年代のピンク映画は、後年のものとは別物」だということがよく分かる作品。ピンク映画にカテゴライズされているため偏見をもたれがちだが、本作は純然たる人生哲学の映画と言っても過言ではない。