Ricola

デュエルのRicolaのレビュー・感想・評価

デュエル(1976年製作の映画)
3.5
自由自在に動かして操るリヴェットの魔法に振り回されるのが心地よい。
「こうだからこう」という枠組みに当てはめて考えることはこの作品ではほぼ無意味であり、ただただリヴェットの世界に身を委ねるのが良いのだろう。


舞台演劇のような演出が特徴的。
現実とフィクションの境目を曖昧にする狙いがあるよう。
例えば、ピアノ演奏が物語外の音のようになされるが、その演奏者は登場人物と同じ空間にいる。それも、登場人物が演奏者の存在を認識しているのだ。
というのも、ピアノの音色が聞こえてくると同時に演奏者とピアノの存在が画面内に現れ、その音に驚いて彼の方を見る者もいるからである。

人々はもはや背景と化す。
例えば、ターミナル駅の構内でたくさんの人々が行き交うなか、二人の女王は一際目を引く存在感を放ちながらそれぞれ歩みを進める。
また、「赤い部屋」で人々がスローダンスを踊る中、彼女たちだけが前に浮き出て見える。
彼女たちの異質さが、他の人たちを背景と同化させることでより浮き彫りになる。

最後に、特に好きなシーンを一つ挙げる。
廊下で敵を追い込むシーンにおいて、光と影が交互に差し込むのだ。
対峙する二人の顔のクロースショットに光または影が、彼女たちの顔を覆う。
敵の特性を利用したうえでの静かな対決シーンの、光と影の引き出し方にドキドキさせられた。

正直この作品を観ていて、今どうなっていて何が繰り広げられているのかをしっかり把握し続けることを難しく感じた。
その分、この自由で摩訶不思議なリヴェットの世界観に酔いしれることで、映画を楽しめるのではないかと思う。
Ricola

Ricola